東急池上線の戸越銀座駅を「木」で改築 終電~始発の間に多摩産材を使い工事

東京都

東急池上線の戸越銀座駅を「木」で改築 終電~始発の間に多摩産材を使い工事

西島三重子のヒット曲で知られる池上線(東急電鉄)の戸越銀座駅(品川区)が多摩産のスギ・ヒノキを使った「木の駅舎」に生まれ変わった。首都圏の大手私鉄が木材の活用に動き出している中で、先駆的なモデルになると話題を集めている。

昭和2年10月に開業した戸越銀座駅は、1日に約2万人が利用しており、下町のレトロ感を残す戸越銀座商店街の玄関口に位置している。東急電鉄(株)は、同駅を約90年ぶりに改築するにあたり、旧駅舎が木造だったことを踏まえて、都内で生産される多摩産材を活用する「木になるリニューアル」に取り組んだ。工事をする時間が終電から始発までの4時間しかなく、住宅地が隣接していることから、職人の手作業を基本にして騒音等を出さないように配慮。昨年9月の着工から約1年4か月をかけて完成させ、12月11日に竣工記念セレモニーを戸越銀座商店街連合会と共同で開催した。総事業費は約7億円で、国の森林・林業再生基盤づくり交付金から約2億5,000万円の支援を受けている。

新駅舎の最大の特徴は、プラットホーム全体を覆う木の屋根。約1,000枚の板を組み合わせることで、木材特有の表情や風合いを感じられるようにした。駅舎に入ると、ほのかな木の香りに包まれる。また、トイレの改装にも木材を使っているほか、木製ベンチも設置しており、多摩産材の利用量は約120m3に及んでいる。このほか、地元住民があきる野市の山林などを見学する「多摩の森とつながるツアー」を実施するなど、「ストーリー性のある取り組みは非常に参考になる」(林野庁木材利用課)と評価されている。

高尾山口駅に参宮橋駅なども、首都の私鉄が「木」に熱視線

首都圏では、京王電鉄(株)が昨年4月に高尾山口駅(東京都八王子市)をスギでリニューアルしたほか、小田急電鉄(株)が参宮橋駅(東京都渋谷区)の改築で木材の活用を計画しており、西武鉄道(株)は秩父産材を内装に用いた観光電車を走らせている。東急電鉄は、戸越銀座駅に続いて、旗の台駅(東京都品川区)の木造・木質化に着手する予定で、各社が木材利用を競う構図になってきている。

(2016年12月11日取材)

(トップ画像=「木の駅舎」に生まれ変わった戸越銀座駅)

『林政ニュース』編集部

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