米材高騰でも安定供給を続けるインターレックス【遠藤日雄のルポ&対論】

全国 海外 2×4

世界を覆うコロナ禍により国内外の経済活動はかつてない打撃を受けている。ただし、コロナ・ショックの影響は業種・業態によって異なり、予想もしなかったビジネス局面も現出している。その代表例が米材の高騰だ。米国の住宅市場が活況を呈しており、北米産木材製品の引き合いが増加。そのあおりで、日本向けの輸出量が減少し、品不足と値上げが続いている。この想定外の事態を読み解くには、国境をまたいだ木材取引の最前線にいるキーパーソンの声に耳を傾ける必要がある。そこで遠藤日雄・NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長は、カナダ産木材製品の対日輸出窓口となっているインターレックス・フォレスト・プロダクツ・ジャパン・リミテッド(東京都千代田区、以下「インターレックス」と略)の峯岸一也社長と対論を行った。

4社が共同出資して海外市場を開拓、メインは日本と中国

インターレックスは、カナダ産木材製品を世界のマーケットに供給することを目的に1993年に設立された。取り扱っている主力製品はツーバイフォー(2×4)住宅向けのディメンションランバーと構造用パネルのOSB。日本にはディメンションランバーを年間約15万m3、OSBを同約20万m3輸出している。

遠藤理事長

はじめにインターレックスが行っているビジネスの概要を教えて欲しい。

峯岸社長

本社はカナダのバンクーバーにある。構成メンバーは4社(表参照)で、それぞれ株式を4分の1ずつ保有している。各社は北米域内では独自に自社製品を生産・販売しているが、海外に輸出する際には窓口を一本化してスケールメリットを出している。弊社はその日本支社という位置づけになる。

遠藤

4社の共同出資による販売会社というわけか。主な輸出先はどこなのか。

峯岸

日本と中国だ。ヨーロッパや中東などにも輸出しているが、柱は日本と中国になる。

低金利(プラス)景気対策で米国住宅市場活況、増産候補地は南部

遠藤

コロナ・ショックで需要が消失したといわれる業界がある中で、米国の昨年(2020年)の新設住宅着工戸数は160万戸を超え、大きく伸びた。これに伴って、木材価格が高騰している。

峯岸

弊社のメンバー企業も予想していなかったレンジに入っている。産地の原木(丸太)価格が上がっても、そのまま製品価格に転嫁することはできないので、難しい事業環境になっている。

峯岸一也・インターレックス・フォレスト・プロダクツ・ジャパン・リミテッド社長
遠藤

米国の住宅市場は「コロナ不況どこ吹く風」のように映るが、その原因は何なのか。

峯岸

基本的に米国は人口が増えており、住宅需要を押し上げるポテンシャル(潜在力)はあるとみられていた。そこに低金利政策やコロナ対策の経済刺激策などが講じられたことで、住宅需要に火がついたようなかたちになっている。今後3~5年間は、150~160万戸の新設住宅着工戸数が続くという見方も出ている。

遠藤

それだけ好況ならば、設備投資をして製材工場を新増設する動きが出てくるのではないか。

峯岸

カナダ最大の森林資源を有するBC(ブリティッシュ・コロンビア)州は、年間伐採量の上限が決まっており、増産しようとしても原木の確保が難しい。アルバータ州などは伐採量を増やせる余地があるものの需要の増加ペースには追いつけない状況だ。

遠藤

北米全体でみて、増産に舵を切れるところはないのか。

峯岸

資源的にポテンシャルが高いとみられているのは米国の南部だ。強度の高いサザンイエローパインが大規模に植林されている。ただ、コロナ禍で労働者の確保などが難しく、直ちに増産シフトに移る局面にはならないようだ。かりに米国南部から日本に輸出するとなると、遠距離輸送のコストをどう負担するかが問題になる。

「機会損失」でも日本向けは維持、非住宅分野に販路広げる

遠藤

北米の事業環境がここまで変わってくると、インターレックスの対日輸出戦略も見直しが必要になるのではないか。

峯岸

カナダの製材工場にとっては、自社製品を米国に売った方が日本向けに出すよりも利益率が高い。つまり、日本に輸出すると「機会損失」になる。
しかし、弊社は30年以上にわたって日本向けにディメンションランバーやOSBを供給し続けてきており、安定した取引ルートや信頼関係ができている。したがって、日本向けの輸出は継続する方針だ。コロナ禍があってもぶれずに、これまでの取引実績を踏まえてユーザーと約束した量は必ず供給していくというスタンスをとっている。
 

遠藤

日本は人口がピークアウトしており、これから新設住宅着工戸数は減少していくと予測されている。

峯岸

その点については、カナダの関係者らとも情報を共有して、対策を検討している。確かに、従来の住宅需要は徐々に縮小していくだろう。しかし最近は、非住宅の中大規模建築物を木造・木質化する動きが活発化してきており、日本政府も法規制の見直しなどを進めている。
非住宅は、ディメンションランバーを用いたツーバイフォー工法が最も競争力を発揮できる分野だ。北米では5~6階建ての木造建築物が当たり前のように建っており、実績もある。ここに新たな販路を見出していきたい。

遠藤

具体的にどのように取り組んでいくのか。

峯岸

コロナ禍の前は、インバウンド需要に対応した中規模ホテルの建設構想などが各地で出ていた。これに対応して地方の建築士向けの講習会なども企画していた。ホテルのほかにも、特養老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)などの施設整備でツーバイフォー工法が採用されるように働きかけていきたい。

市場規模が桁外れの中国は価格優先、日本は最大の成功例

遠藤

最後にグロバール市場における日本の位置づけについて聞きたい。アジアでは日本とともに中国を重視しているということだが、ディメンションランバーやOSBを輸出しているのか。

峯岸

そうだが、住宅の構造材には使われていないようだ。中国ではマンションをコンクリート打ちっぱなしのまま販売するので、内装工事の下地材などにディメンションランバーなどが使われるケースが多いと聞いている。

遠藤

中国の人口は約14億人であり、需要拡大の潜在力は大きい。

峯岸

とにかくマーケットの規模が桁外れなので、原木でもランバーでも一番安いものを買おうとする。その意味では、カナダも日本もどの国にとっても木材輸出のチャンスがある。

遠藤

ほかのアジア諸国はどうか。

峯岸

韓国やベトナムにも輸出しているが、基本的な需要量が限られている。インドにもプロモーションは行っているが、そもそも「木の文化」がないので、まだ時間がかかるだろう。
こうした中で、日本はツーバイフォー工法が建築基準法に明確に位置づけられ、一定の市場規模がつくられている。カナダにとって代表的な成功事例であり、今後も継続的な輸出を続けていきたい。

(2021年2月12日取材)

(トップ画像=インターレックスが輸出しているディメンションランバーやOSBのサンプル)

遠藤日雄(えんどう・くさお)

NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。

この記事は有料記事(2915文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。