「TOKYO WOOD」の“出口”を担う小嶋工務店【突撃レポート】

東京都 木造住宅

大手ハウスメーカーや有力ビルダーが群雄割拠する首都トーキョー。“東京の木”にこだわり、年間約70棟の戸建て住宅を建設している工務店がある。創業55年目を迎えた(株)小嶋工務店(小金井市、小嶋智明社長)だ。「ウソをつかない家づくり」を掲げる同社は、「TOKYO WOOD」の住宅供給を担う工務店としても存在感を高めている。(文中敬称略)

「ウソをつかない家づくり」を掲げ、仕事のディテールまで重視

「いい家と謳うのであれば、その“いい”の根拠を示さなければならない」──小嶋工務店社長の小嶋智明(53歳)は明快に言う。この言葉のとおり、同社の家づくりは細部にまで目配りが行き届いている。

その一例が4年をかけて製作した施工方法に関するディテール集だ。躯体部分の建て方から、防水シートの貼り方、資材の結束方法に至るまで、具体的な作業の仕方と留意点が整理されており、(財)ベターリビングが第三者機関として認証している。このディテール集を現場監督や大工などが共有することで、施工時に厳しいチェックの目が入り、高品質の家を安定的に供給することができる。

同社が何よりも重視しているのは、家づくりの“再現性”。この観点から使用部材も厳しく選別している。標準採用しているのが「TOKYO WOOD」だ。

天然乾燥、含水率20%…厳しい基準を工務店の覚悟で支える

「TOKYO WOOD」とは、メイドイントーキョーの家づくりを目的に独自の基準で選び抜かれた高品質木材のこと。多摩地域の林業家・製材所・プレカット工場・工務店・建築士らが連携してブランド化に取り組んでおり、推進母体として一般社団法人TOKYO WOOD普及協会(小金井市、理事長=沖倉喜彦・(有)沖倉製材所社長)が2012年3月に発足、現在は26団体・29名が正会員となっている。小嶋は、同協会の専務理事だ。

「TOKYO WOOD」の品質基準は厳しい。天然乾燥だけで含水率を20%以下に落とし、四面背割れを入れて狂いを防ぎ、強度(曲げヤング係数)はスギでE70以上、ヒノキはE90以上としている。

「TOKYO WOOD」の印字がされた構造材、これまで512棟建てられ、約4,700m3が利用された(2020年10月時点)

一般的な人工乾燥は行わず、グレーディングマシンで1本1本の含水率や強度を測定することに、当初は難色を示す関係者もいたという。だが、小嶋は、「粘り強く対話を重ねた上で、ある約束をした。それでみんなの足並みが揃った」と振り返る。

小嶋が行った「ある約束」とは、グレーディングマシンで弾かれた材もすべて小嶋工務店が購入すること。胴縁や間柱といった強度がそれほど求められない部材としてならば有効利用できる。地域材調達に関わるリスクを工務店としてすべて引き受ける覚悟をみせたことが「TOKYO WOOD」を動かす原動力になった。

グッド&ウッドデザイン賞を(ダブル)受賞、産地と消費者をつなぐ

昨年、小嶋工務店とTOKYO WOOD普及協会に朗報が届いた。「グッドデザイン賞2020」と「ウッドデザイン賞2020」をダブルで受賞したのだ。

東京の林業地を訪ねるバスツアー

小金井市にある「TOKYO WOOD」のモデルハウスでは、体験宿泊もできるようになっている。小嶋は、その意図を「家は高い買い物になる。だから時間をかけて検討してもらいたい」と話す。

一般消費者を対象にした1日バスツアーも随時開催している。午前9時頃にJR武蔵小金井駅を出発し、檜原村の山林や貯木場を見学した後、製材所で木工体験をするという工程だ。

また、ホームページでの情報発信に加え、情報誌『森ノ報セ(もりのしらせ)』を定期的に発行するなど、草の根レベルで“つながり”を広げる取り組みを続けている。こうした地道な努力の積み重ねがダブル受賞として評価された。

独特の手法で人材育成、「コロナ不況の影響もほとんどない」

小嶋工務店は、外断熱・二重通気工法を特徴とする「ソーラーサーキットの家」の加盟店でもあり、自然な空気の流れと「TOKYO WOOD」を活かして、通年で温度差が少ない快適な住環境の実現を目指している。

構造材の接合で強度が2.8倍になる1本100円のビスを独自につくるなど、技術開発にも余念がない。

小嶋智明・小嶋工務店社長

現在の社員数は、営業、設計などを合わせて42名。新入社員は、米国の心理学者が提唱するソーシャルスタイルというコミュニケーションスキルを日々の仕事を通じてマスターするなど、独特の人材育成法を取り入れている。

展示場は、小金井市、立川市、三鷹市に4棟あり、この4月に本社ビル前にオープンする総合住宅展示場にも出展する予定だ。

本社ビルの2階はショールームになっており、ドアから壁、床、手すりにいたるまで、住宅に必要なパーツがすべて揃っている。その一角には授乳室もあり、幼い子供と一緒でも落ち着いて打ち合わせができる。  

「ここ3年ぐらいで経営基盤が強くなった。コロナ不況の影響もほとんどない」と話す小嶋は、後継者の育成についても、「人材の層が厚くなってきた。大丈夫だろう」と笑顔をみせた。

(2021年2月10日取材)

(トップ画像=上棟中の「TOKYO WOOD」の家、価格は1棟平均2,500万円程度)

『林政ニュース』編集部

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