1世紀以上広葉樹を挽き続けながら業容を広げる昭和木材【突撃レポート】

北海道 木材・木製品製造業

北海道旭川市に本社を置く昭和木材(株)(高橋範行・代表取締役社長)は、山づくりから住宅建築まで手がける総合木材企業として知られる。同社の事業領域は様々な分野に広がっているが、核心にあるのは広葉樹製材だ。

国内外に広がるネットワーク、年間約8,000m3の広葉樹原木を消費

昭和木材は、全国11か所に支店を配し、中国の大连市にも事務所を置く。総従業員数は266名。この事業基盤をベースに、造林・素材生産から木材の加工・販売、住宅建築、家具製造まで幅広いビジネスを展開している。年商は150~160億円。このうち約60億円は合板などの商材事業が占め、約40億円が広葉樹事業、プレカット事業も約40億円、家具住宅建設事業が約10億円などとなっている。この中で、同社が強いこだわりを持っているのが広葉樹事業だ。大正2年(1913年)の創業時から1世紀以上にわたって広葉樹材を挽き続けており、今も旭川市の本社工場で年間約8,000m3の広葉樹原木(丸太)を製材している。

夏場は乾燥防止のためスプリンクラーが回る原木土場には、北米産のウォールナット、ホワイトオークやロシア産のナラやタモ、そして道産を中心とした国産のナラやタモ、ニレ、カバなどの大径材が並ぶ。高橋社長は、「広葉樹は奥が深い。だからあらゆるものをやってきている」と口にした。

商社を介さずに“調達力”を高め、加工・保管に独自のノウハウ

昭和木材は、広葉樹原木を集める“調達力”に磨きをかけてきた。外材は商社を介さずに、海外の産地に出向いて直接買い付ける。国産材については、基本的に原木市場を利用しているが、道内の公有林から直接調達もしており、市場と直接調達を合わせて年間約3,000m3を利用している。

製材品には番号、樹種、サイズなどが記されている

旭川工場の原木土場の隣には、製材品がストックされている。製材した広葉樹の板材などは、約2年間天然乾燥させて含水率を約20%まで落とした後、人工乾燥機で8%まで下げる。人工乾燥は、月間約500m3のペースで行っている。

バラエティに富んだ広葉樹材は、針葉樹のスギやヒノキなどと違って規格化がしづらい。同社は、様々な板材を販売先ごとに仕分けて保管しているが、サイズが異なる細かい板材をまとめて隙間を埋めるなど独特のコツがある。「細かいところにノウハウが詰まっている。余分な隙間があると空気を運ぶことになるから」と高橋社長は説明する。

旭川工場には、ムク(無垢)材を接ぎ合わせて集成材を製造する部門や、板材から家具を製造する部門もある。従業員は若手からベテランまで揃っており、人材面でも幅広い陣容となっている。

旭川工場の概要を説明する高橋範行社長

この15年で資源とマーケット事情が激変、プリントシートが台頭

高橋社長は、工場の稼働状況を確認しながら、「この15年ぐらいで広葉樹の資源とマーケット事情は本当に変わった」と語り始めた。かつては道内に100社以上の広葉樹専門製材所があったが、今は10社程度にまで減少した。「廃業した理由は資源不足の方が大きかったのではないか」と言う。外材は禁伐などの規制が強まって輸入量が減り、国内でも自然保護の要請が高まって「資源はあるが活かせない」状況が続いた。このため、とくに広葉樹の大径材を確保することは年々難しくなっている。

マーケット事情も様変わりした。内装・フローリング市場では、木目調のプリントシートのシェアが高まり、ムクの内装材やフローリング材は劣勢を強いられている。「体感的に以前は7対3でムク製品が優勢だったが、今はプリントシートに逆転された」と高橋社長は話す。5年前まではタワーマンションの高層フロアなどへの納品もあったが、現在はめっきり少なくなり、「これもプリントシートに代替されたのだろう」とみている。

ただ、最近は消費者の自然志向が高まり、ムク製品の欠点とされていた節が「キャラクター」として評価されるなど、新たな需要動向も出てきているという。

全体がシュリンク(縮小)していっても「価値をさらに上げて生き残る」

世界を揺るがしている木材不足と価格高騰の波は、広葉樹の世界にも及んでいる。今年(2021年)の1月頃から原木価格が上昇しており、「以前と比べて樹種によっては25~35%値上がりしている」という。コンテナ不足やコロナ禍による減産などの影響も長引いており、事業縮小に追い込まれる企業も少なくない。

テーブルに使用する一枚板

高橋社長は、「木材価格の高騰など異常事態も起きているが、基本的な経営環境を抑えておく必要がある」と述べ、「国内外の広葉樹資源が減少し、マーケットも縮小して、全体がシュリンク(縮小)していくのは避けられない。しかし、決してなくなる業界ではない」と語気を強めた。「例えば」と言って指し示したのが、テーブルに使用する一枚板。加工技術の向上で小径木を接ぎ合わせたテーブルもつくれるようになっているが、「やはり一枚板ならではの良さは何物にも代えがたい」。大正時代から培ってきた“木づかい”の知見と技術をベースに、「今まで築いてきた事業を守りながら、広葉樹の価値をさらに上げて生き残っていく」という経営方針には(いささ)かの迷いもみられない。

(2021年9月10日取材)

(トップ画像=北米やロシア産の原木が並ぶ土場)

『林政ニュース』編集部

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