コロナ禍でも100%注文住宅で伸びる七呂建設 【遠藤日雄のルポ&対論】

鹿児島県 木造住宅

コロナショックとウッドショックが依然として収束せず、林業・木材産業界とともに住宅業界も難しい対応を迫られている。全国建設労働組合総連合(全建総連)が8月6日~8月30日に行った工務店へのアンケート調査(32県の273社が回答)によると、建築用製材品の調達は5月時点と比べて「悪化した」が51%を占めた。また、木材価格高騰による住宅建築のコストアップについて、「一部を自社で負担」が48%、「お客様に負担してもらった」が39%という厳しい実態が明らかになった。すでに住宅価格の上昇や工期の遅れなど、消費者への影響が一部で出始めている。

こうした中で、遠藤日雄・NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長のもとに、ある情報がもたらされた。それは、鹿児島市に本社を置く(株)七呂建設(七呂恵介・代表取締役社長)が木造注文住宅で堅調な業績を上げているというものだ。「この難事を一体どうやって乗り切っているのか?」と疑問を深めた遠藤理事長は、同社の国分福島モデルハウス(霧島市)に向かった。

鹿児島県内だけで年300棟突破へ、木材製品の確保に苦労

七呂建設は、1960年にマンションや公共建築の型枠工事を手がける七呂組として創業し、2006年に住宅建築業に転じた。現在では、鹿児島をはじめ福岡、熊本、宮崎にモデルハウスを建設し、南九州を主体に木造注文住宅を供給している。鹿児島市にある和風デザイン住宅「四季ZEN」ではムク(無垢)の国産スギ、ヒノキ、マツなどを使うなど、国産材の利用にも社を挙げて取り組んでいる。

霧島市の国分福島モデルハウスに着いた遠藤理事長を出迎えたのは、同社の七呂恵介社長。七呂社長は、九州の名門進学校として知られる鹿児島県立鶴丸高校から横浜国立大学工学部建築学科に進学し、卒業後、大手ハウスメーカーに勤務してから七呂建設に入社。2015年5月に3代目社長に就任し、経営の最前線に立っている。

遠藤理事長

七呂建設といえば、ハウス・オブ・ザ・イヤー優秀賞を3年連続で受賞するなど全国レベルで数々の栄誉に輝いているが、地元でも評価が高い。2018年度に続き、翌19年度も2年連続で「鹿児島県住宅ランキング」の第1位にランクされたことは有名だ。年間の建築棟数はどのくらいになっているのか。

七呂恵介・七呂建設社長
七呂社長

鹿児島県内では200棟余、宮崎・熊本両県などを加えるとゆうに300棟を超える。近いうちに鹿児島県内だけで300棟を突破することは間違いない。

遠藤

すでに、南九州を代表する地域ビルダーといえる。それだけに木材製品の不足と価格高騰の影響は大きいのではないか。

七呂

率直に言って厳しい局面を強いられている。とくに、建築用木材製品の調達で苦労している。

遠藤

七呂建設の木造住宅では、構造材にどのような木材製品を使っているのか。

七呂

弊社の住宅は、木造軸組構法で建てている。柱には国産ヒノキ集成材、梁(平角)は欧州産レッドウッド集成材、土台は国産ヒノキ集成材を使用している。

遠藤

EU(欧州連合)からのレッドウッド集成材の輸入量が減少し、価格が高騰している。米材も同様であり、国産製材品の価格も上昇している。
こうした価格高騰は、住宅建築のコストにも響いているのではないか。

七呂

そのとおりだ。弊社としてコストダウンに必要な最大限の努力を行った上で、お客様には実情を丁寧に説明し、建築費の掛かり増し分についてご理解をいただくようにしている。

多様なニーズに応え“新たな生活様式”を実現する住宅を目指す

遠藤

このような難しい局面でも、七呂建設は建築棟数を着実に伸ばしていると評判だ。その理由は何か。

七呂

100%注文住宅を貫いているからだろう。

遠藤

100%? 他社の注文住宅とはどう違うのか。

七呂

注文住宅を謳っている工務店や地域ビルダー、ハウスメーカーは少なくない。しかし、大半の注文住宅は、半分はレディメイド、つまり既製品だ。残りの半分をオーダーメイド(注文)にして対応するケースがほとんどだ。しかし、弊社の場合はお客様の意向を最大限反映できるように100%オーダーメイドにしている。

遠藤

七呂建設は、この国分福島モデルハウスを含めて18のモデルハウスを展開していると聞いている。コロナ禍で住宅展示場は閑古鳥が鳴いているようだが。

洗練されたデザインの和室
七呂

コロナ禍で「集合」と「移動」に制限がかけられた。このため、総合住宅展示場では、書き入れ時であるゴールデンウィークでも集客が思うようにいかず、受注に結びつけることができなかった。一方、弊社のモデルハウスは、予約制で見学を受け付けている。だ。ご覧になる方々はご家族が中心で「密」は避けられる。お客様のご意向を時間をかけてじっくりとお聞きすることができる。

遠藤

そうしたやりとりを通じて、住宅へのニーズにどのような変化を感じているか。

七呂

コロナ禍で長期の“巣ごもり”を強いられていることも影響しているのだろうが、いわゆる“新たな生活様式”を希求するお客様が想像以上に多い。ウイルス対策やリモートワークへの対応など、住宅に求めるものが高度化、多様化してきている。

遠藤

そうしたニーズに応えていかなければ、これからの家づくりは難しくなるということか。

七呂

弊社はこれまでもお客様の「こういう家に住みたい」という願望に少しでも近づけるように全力で対応してきた。この姿勢が益々重要になると痛感している。お客様の「家への願い」は1棟1棟異なる。これに応えていくには、地域に根差して、100%注文住宅で実現していくしかない。

ムクのヒノキ柱など国産材利用を推進、安定調達が不可欠

遠藤

コロナ禍を否定的にとらえずに、ポジティブに見直すことで、消費者の潜在的な「家への願い」を引き出せるというわけか。
最後に、今後どのような国産材利用を考えているのかを聞きたい。鹿児島県内だけで年間300棟の建築実績があれば、製材品は5,000m3くらい必要になるだろう。

七呂

国産材の利用は積極的に進めていきたい。まず管柱だ。今はヒノキ集成管柱を主要スペックにしているが、今後はムクのヒノキKD(人工乾燥)柱を選択肢の1つにできないかと検討している。

開放的な空間が“新たな生活様式”にマッチする
遠藤

目のつけどころが鋭い。九州はスギのイメージが強いが、ヒノキの丸太生産量が熊本県を中心に増えてきている。
ただ一般論として、ムクは集成材に比べて強度の安定性で不安が残るとみられている。

七呂

弊社では、建物の耐震シミュレーションをすべての物件に対して行っている。このため、個々の材料の強度に関わらず、建物全体の強度を確認できるようになっている。こうした点を活かしながらヒノキをはじめとした国産材の利用拡大を進め、「環境と家計と人にやさしい家」を提供していきたい。

遠藤

林業・木材産業界に望むことは何か。

七呂

弊社にとって、寸法と精度の安定性に優れた国産材製品をいかに確保できるかが死活問題になる。どうやったら安定的な調達ができるかを関係者が一丸となって考えていきたい。

遠藤

その問題は、コロナ禍の前から国産材業界が突きつけられていた課題だ。今こそ新たな道筋をつけていかなければならない。

(2021年9月5日取材)

(トップ画像=国産材を最も多く使っているモデルハウス「四季ZEN」の外観)

『林政ニュース』編集部

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