家具産地・大川で販売好調、行政もバックアップ【伸びる!センダン①】

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早生広葉樹・センダンがぐんぐんと“伸びて”いる。家具用材として使えることがプロの眼に叶い、良質材を育成する技術も一段と進化してきた。日本林業の地平を拡大し始めたセンダンを巡る最新状況をお伝えする。

丸仙工業のダイニングテーブルがヒット! 手ざわりなど抜群

「これは売れる!」──日本を代表する家具産地、福岡県大川市の田中智範・(株)丸仙工業社長は明言する。センダンの適度な硬さと木目の美しさ、クリア塗装との相性のよさに加えて、原材料(原木)が安定的に確保できるようになったことが、この発言の背景にある。

主力商品として売り出しているのがセンダンの1枚板を使ったダイニングテーブルだ。長さ4.5mというワイドなサイズで使い勝手を高め、キッチン部分にもセンダンを使って統一感を出し、最新の住設機器などと組み合わせて販売している。

同社など大川の家具業者は、福岡県内のマンションデベロッパーらと連携して早生広葉樹を活用するプロジェクトを展開している。同プロジェクトで開発した製品をジャパンホームショーなどの展示会に出展したところ、「従来とは違う人がブースを訪れ、とくにセンダンテーブルの手ざわりを確かめていった。そのまま成約につながることもあり、センダンの持つ魅力を実感した」と田中社長は話している。

「欠点らしい欠点はない」、クリア塗装で鮮やかなオレンジに

丸仙工業が所属する協同組合福岡・大川家具工業会は、2009年から国産家具の生産・販売に関する特別プロジェクトを実施している。当初はスギ・ヒノキの活用に取り組んでいたが、なかなか目立つような成果が出なかった。

そんな中、田中社長が同プロジェクトのリーダーに就任。新規樹種を探すうちにセンダンと出会い、「ほどよい硬さで加工しやすく、欠点らしい欠点はない」と即座に高評価を与えた。一般にセンダンはケヤキの代替材とされているが、「家具業界はそんなこと知らない。センダンには独自のよさがある。なによりもクリア塗装したときに鮮やかなオレンジ色になるのがポイントだ」と田中社長は強調する。

田中智範・丸仙工業社長

センダンは15~20年という短い伐期で収穫でき、原木の供給体制も整備されてきている。これに伴って、コストと価格競争力もついてきており、同社に続いてセンダン家具を売り出す企業が増加中だ。

自然・ナチュラル志向が追い風、国内と国外の2正面作戦で臨む

家具業界では、ウォールナットに代表される重厚感のある製品が長らく好まれてきた。ただ最近は、もっと自然でナチュラルな材料と仕上げ方法を求める“本物志向”へとトレンドが変わりつつある。

丸仙工業が福岡県内の保育園に家具を納入した際に、こんなことがあった。「打ち合わせ当初、保育園はウォールナット家具などを要望していた。だが、隣地に同園の所有林があることがわかり、園児のセンダン植林活動をセットで行ったらどうかと提案した。するとSDGsへ向けた教育ができると喜ばれ、センダン家具に切り替わった」。

こう話す田中社長は、今後の事業展開について国内と国外の2正面作戦で臨む方針を打ち出している。「国内についてはセンダンを家具や内装材として利用することを推進していく。一方、海外に関しては、まずセンダンの小物から輸出を始め、ユーザーが広がってきたら家具を出荷できるようにしていきたい」。

大川市長がトップセールス、市民とともに未来に向けて植樹

センダン活用の動きは産業界だけにとどまらない。地元の大川市もプロジェクトの支援に乗り出している。大川インテリア振興センターの理事長もつとめる倉重良一・大川市長は、県内の自治体などへ何度も足を運び、国産材の利用を呼びかけている。「新しい材料や製品を受け入れてもらうには、初期のスタートが大事になる」とみているからだ。トップセールスの努力が実り、福岡県知事の応接室にセンダン家具が納品され、「好評を得ている」という。

倉重良一・大川市長

同市は、市民を巻き込みながらセンダンの普及に取り組んでいる。その1つが福岡・大川家具工業会と連携して行っている植林活動だ。

同工業会は、2017年に福岡県八女市で初めてセンダンを植樹するイベントを八女森林組合とともに開催。家族連れなど100名以上が参加して500本のセンダンを植え付けた。

翌18年6月には、大川市文化センターなどに20本のセンダンを植樹。市内の保育・幼稚園児の手によって植えられたセンダンの下には、標札「未来への希望の木『センダン』」が立てられた。そこには、次のような一文がある。「日本一の木工産業集積地である大川が、自ら植林した九州のセンダンを活用し、高品質で美しい木工製品をつくる。そんな本当の意味での『木工のまち』大川が未来へ向かって進化し始めました」。

大川市文化センターに植えられたセンダン

同センターのセンダンは、市長室から見ることができる。植樹後3年半が経過し、もう樹高が4.5mを超え、胸高直径は5㎝に。やはり成長スピードは速い。その姿を見詰めながら倉重市長は、「センダンの“輪”が広がってきている」と口にした。確かに九州では、センダンの“輪”を多様なキーパーソンが担うようになってきている。(【伸びる!センダン②】につづく)

(2021年11月29日~12月1日取材)

(トップ画像=センダンの1枚板を使ったダイニングテーブル)

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『林政ニュース』編集部

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