日本製紙が「特定苗木」の生産を全国で拡大

全国 苗木生産・育種

日本製紙(株)(東京都千代田区、野沢徹社長)は、成長に優れ二酸化炭素(CO2)吸収能力の高いエリートツリー等の育成を推進するため、「特定苗木」の生産を全国ベースで拡大する。国(農林水産省)は、昨年(2021年)5月に策定した「みどりの食料システム戦略」の中で、2050年までに林業用種苗の9割をエリートツリー等にする目標を設定した。同社は国内に約400か所、総面積約9万haの森林を所有しており、「社有林のエリートツリー化」と地元との“協業”を進めながら、国の目標達成に協力する。

新たに静岡・鳥取・広島・大分県にエリートツリー拠点、60万本増産見込む

昨年(2021年)3月に改正された間伐等特措法では、成長力の高い特定母樹を増殖し、特定母樹から採取・育成された特定苗木の植栽を進めることが目的に掲げられている。

同社は、熊本県と北海道で特定苗木の生産を行っており、熊本県ではスギの特定苗木を年間5万本、北海道ではグイマツ特定母樹とカラマツの交雑種であるクリーンラーチの苗木を同8万本育てている(2021年実績)。

熊本県では2024年に特定苗木の生産量を30万本に増やす予定だが、これに加えて、新たに静岡・鳥取・広島・大分の4県で同法に基づく特定増殖事業者の認定を取得した(1月18日に発表)。これら4県でも採種園と採穂園を造成し、2024年からコンテナ苗の生産を始めることで60万本規模の増産を見込んでいる。

苗木業者との“協業”を推進、採種園は「閉鎖型」で整備

同社は、特定苗木の生産拠点拡大とともに、都道府県をまたいだ広域的な苗木流通体制づくりにも取り組む方針。また、全国各地の種苗生産業者らとの“協業”を進め、「地場の苗木産業の活性化にも貢献しwin-winの関係を築いていきたい」(基盤技術研究所森林資源研究室)としている。

なお、新たに整備する採種園は、ビニールハウス内で人工交配を行う閉鎖型施設とする。一般的な露地での開放型採種園では、外来花粉の混入などが避けられない。閉鎖型とすることで、特定母樹の形質を確実に引き継いだ優良な苗木を早期かつ大量に生産できると期待されている。

(2022年1月18日取材)

(増産を目指す「特定苗木」、画像提供:日本製紙)

『林政ニュース』編集部

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