小坂善太郎・林野庁長官に就任の抱負を聞く

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7月1日付けで林野庁長官に就任した小坂善太郎氏(昭和63年入庁・名古屋大林卒、60歳)*1は、7月14日に就任記者会見を行って、当面する課題への対応方針や抱負などを語った。

低層非住宅の木造化なども推進脱炭素化は「追い風になる」

長官に着任した小坂氏がまず向かい合う任務は、小泉農相が打ち出した「『森の国・木の街』プロジェクト」*2の遂行だ。

小坂氏は、「環境省と連携してSHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)*3を活用した木材利用の拡大に取り組む」と述べるとともに、「全国で街の木造化を加速化させていく。その際、中大規模だけではなく、低層非住宅の木造化にも注力していく」と力を込めた。

小坂善太郎・林野庁長官

林業・木材産業を取り巻く状況は急ピッチで変わりつつあり、来年度(2026年度)からは、2050年カーボンニュートラルに向けた官民共創の枠組みであるGX(グリーントランスフォーメーション)リーグで、排出量取引制度が本格的に始まる。また、建築物のライフサイクル全体に関わるCO2排出量を算定・評価する「建築物LCA」*4も2028年度から法定化された制度としてスタートする予定となっている。

小坂氏は、森林整備部長時代にJ-クレジット制度の改定に携わったことなどを踏まえ、「脱炭素化は追い風になる。森林・林業・木材産業の存在意義をしっかりとPRしていきたい」と語った。

改正森林経営管理法を活かして地域の森林づくりを進めていく

来年(2026年)5月の閣議決定が予定されている新しい森林・林業基本計画については、現行計画の「伐って、植えて、育てる」循環型林業の実現やグリーン成長に資する取り組みを継続する方向で検討が進んでいる。その中で小坂氏が重点ポイントに挙げたのは、先の国会で成立した改正森林経営管理法*5の活用だ。

同法で創設された「新たな仕組み」では、市町村が「集約化構想」を策定すれば「集積配分一括計画」がつくれるなど手続きが簡略化される。また、特定非営利活動法人などを「経営管理支援法人」に指定して市町村の事務負担を軽減できる。

小坂氏は、「『新たな仕組み』を活用して、市町村だけではなく、森林所有者、森林組合、林業事業体などが一緒になって地域の森林経営をどう担っていくかを議論していって欲しい」と期待を込めた。

また、4月に施行された改正クリーンウッド法*6を念頭に、「森林計画制度に基づいた合法木材を利用して確実に再造林できるサプライチェーンをつくっていきたい」とも口にした。

課題もあればチャンスもある、「種を蒔かないと何も始まらない」

人口減少に伴って国内の住宅市場が縮小していくことが懸念されている。ただ、小坂氏は、「国産材にはまだまだ大きな可能性がある」とし、「例えば2×4(ツーバイフォー)材については、北米産のSPF材に代わって国産材が使われるシーンが増えている」と指摘した。オフィスなどの内装木質化も大きなビジネスチャンスになるとの見方を示し、「内装材の活用は個人的にももっと攻めていきたい分野だ」と語気を強めた。

一方、山元対策では、スマート林業を実現するために、「デジタル技術を含めた新たな作業体系の構築が必要だ」と強調。「機械化が進めば労働負荷が軽減され、若い人材の確保も期待できる」と述べた上で、「時間が経てば経つほど所有や境界が曖昧になって手がつけられなくなるようにはしたくない。大きな正念場を迎えている」との危機感も隠さなかった。

小坂長官の自宅(画像提供:小坂善太郎氏)

小坂氏の趣味は、園芸。自宅は小さな植物園のようになっており、季節に応じて様々な花々が咲き誇る。「種を蒔かないと何も始まらない」と語る小坂氏は、「森林・林業・木材産業は課題も多いが良い動きもチャンスもある。新たな挑戦を後押しして希望を抱ける政策を進めていきたい」と締め括った。

(2025年7月14日取材)

(トップ画像=「地域一体となって森林づくりについて議論して欲しい」と話す小坂長官)

『林政ニュース』編集部

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