建築物の原料調達から廃棄に至るライフサイクル全体で二酸化炭素(CO2)の排出削減を目指す新しい制度の導入検討が進んできている。木材製品は製造時のCO2排出量が他の建材等と比べて少ないなど優位性を持っているが、新制度の仕組みに適合するような体制整備を急ぐ必要がある。
木材製品の優位性を活かす体制整備が急務
政府の関係省庁連絡会議は、4月25日に「建築物のライフサイクルカーボンの削減に向けた取組の推進に係る基本構想」を決定し、2028年度をメドに新制度を開始するスケジュールを示した。建築物のライフサイクル全体におけるCO2排出量を算定・評価する「建築物LCA」の仕組みを制度化することで、脱炭素化の取り組みを加速させる狙いがある。
国外では、EU加盟国が2028年から1,000m2超の新築建築物を対象にLCAを義務づけることにしており、国際的な動きに遅れをとらないためにも新制度を導入する必要がある。
建築物LCAを通じて木材、とくに国産材利用による優位性を具体化していくためには、各事業者が自社の製品について「排出原単位」(経済活動量1単位当たりのCO2排出量)を整備し、製造工程の効率化などによって、その低減を図っていくことが有効とされている。
国内の木材産業関連団体は、2023年度までに品目別の排出原単位を整えており、基礎的な情報基盤はできている。今後は、EPD(ISOに準拠した環境認証ラベル等)などの第三者検証に基づく排出原単位へランクアップして客観的な信頼性を高めていく必要がある。なお、すでに銘建工業(株)(岡山県真庭市)や(株)サイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市)などは、CLT(直交集成板)でEPDを取得して建築物LCAへの対応を進めている。
(2025年4月25日取材)
(トップ画像=木材製品の排出原単位(業界平均値))

『林政ニュース』編集部
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