東京中央木材市場が富里市で新出発、木の魅力を発信!【突撃レポート】 

東京中央木材市場が富里市で新出発、木の魅力を発信!【突撃レポート】 

首都圏の製品市売市場を代表する東京中央木材市場(株)(飯島義雄社長)が本社を千葉県の浦安市から富里市に移し、「酒々井(しすい)インター富里市場(以下、「富里市場」と略)」を開設した。国産材をふんだんに使用した木造の本社棟や展示棟などを整備し、1月から営業を行っている。2月4日にはオープン記念市を開催し、“木の魅力を発信する新拠点”がお披露目された。

鉄骨造計画を変更し3棟を木造化、浜問屋の取り扱い製品活用

東京中央木材市場の富里市場は、東関東自動車道の酒々井インターチェンジを降りてすぐの場所にある。浦安市場より2割ほど広い約2.4haの敷地に、木材置き場と9棟の施設があり、このうち本社棟、展示棟、休憩棟の3棟を木造で建設した。残り6棟は鉄骨造で、問屋事務所やせり林場、加工棟などとなっている。

施設全体の設計・施工・監理は不二建設(株)(東京都港区、松岡秀郎社長)が行い、本社棟と展示棟のデザイン監修をアトリエフルカワ一級建築事務所(東京都東久留米市、古川泰司代表)が担当した。

施設に使った木材には、同社に所属する浜問屋が取り扱っている一般流通製品を採用。木材使用量は、本社棟が143.49m3、展示棟が50.07m3、休憩棟が10.44m3で、鉄骨造の問屋事務所棟でも4.29m3の木材を用いた。合計で208.29m3の木材を使用したことにより、140.47tの二酸化炭素(CO2)を固定していると試算されている。

移転計画当初、不二建設はすべての施設を鉄骨造にすることで設計を進めていたが、東京中央木材市場からの強い要望を受けて3棟を木造に変更した。しかし、不二建設は非住宅の木造建築物に関する経験がなかったため、アトリエフルカワがデザイン監修で加わり、木造棟の図面を引き直した。

本社棟と展示棟で“木づかい”徹底、デザイナーらとの交流も

富里市場の“顔”と言える本社棟と展示棟は、どちらも2階建てで構造材を(あらわ)しで使うなど、建物全体で“木づかい”を進めている。

本社棟の外観、正面の外壁は塗装処理をしたヒノキフローリングで仕上げた

本社棟は、1階の事務所スペースに産地の異なる9本のムク(無垢)のヒノキ柱を使用し、受付カウンターには秋田・和歌山・鹿児島県産のスギ一枚板をつなぎあわせて設置、床はナラのフローリングにするなど、多種多様な木材と触れ合えるようになっている。また、2階の会議室は、スギのムク材とカラマツの集成材を使った張弦梁トラスで広々とした空間にした。

展示棟の内部、天井の高い大空間の中に一枚板のテーブルなどを揃えている

展示棟は、構造材に長野県のカラマツ集成材、1階と2階をつなぐ通し柱に奈良県の磨き丸太を使用。ここでも張弦梁トラスによって大空間を実現し、各地の銘木や一枚板などを配置している。自然採光を利用しながらスポットライトも活用することで展示品の様々な“表情”が見えるようになっており、建築士やデザイナー、家具、木工業者などとの提案・交流の場にすることを想定している。

オープン記念市に約540名が参集、地元も「後方支援する」

2月4日に開催されたオープン記念市には約540名が参集し、来場者からは「首都圏の主な木材事業者はほとんど来ているのではないか」といった声も上がった。

挨拶する飯島義雄・東京中央木材市場社長

式典で挨拶した飯島義雄社長は、「ここで使用したすべての木材は浜問屋の皆さんから調達した。ウッドショックで木材供給が不安定なこともあったが、問屋と産地との長年の信頼関係があったからこそ実現できた」と強調。また、来賓として出席した五十嵐博文・富里市長は、「酒々井インターチェンジの開設以降、積極的に企業誘致を行ってきた中で、東京中央木材市場とのご縁が生まれた。当市としても後方支援をしながら前に進んでいきたい」との姿勢をみせた。

懸案の渋滞問題を解決、木材セラピーなど含め木の良さ伝える

東京中央木材市場は、1953年に東京・木場の木材問屋が中心となり複式木材市売市場として江東区で創業した。全国から集まる木材製品の売買拠点として千葉方面にも業容を広げ、1986年に本社を浦安市に移転した。その後、湾岸エリアの開発が進むにつれて、同社周辺の交通量が増加。とくに、国道357号線(通称:東京湾岸道路)の渋滞が激しくなり、対策を求める声が上がっていた。

飯島社長は、「渋滞の問題があり10年前ほどから本社を移すことを検討していた」と振り返る。そして、「移転するのであれば木の魅力を発信できる拠点にしたかった」と続けた。移転先に選んだ富里市は、同社の「千葉木材センター」(四街道市)と「千葉第2木材センター」(成田市)の中間に位置し、利便性が高い。これまで浦安市場が担っていた東京中心の流通機能については、1月6日から稼働している東葛西中継センター(江戸川区)が対応している。

同社には9つの浜問屋が所属し、年間取扱高は約40億円で推移している。今回の本社移転にあたり、20〜30歳代の4名の社員を採用し、組織の若返りも図っている。

飯島社長は、「モノが集まるところに人も集まる」と述べ、「銘木をはじめ各地の木材が集まった展示棟などを活用して木育や木材セラピーも展開し、木の良さを一般消費者に伝えていく」と今後を展望している。

(2023年2月4日取材)

(酒々井インター富里市場の全景、画像提供:東京中央木材市場))

『林政ニュース』編集部

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