八ヶ岳の麓から伝統的な日本建築で世界に挑む!素朴屋【企業探訪】 

関東地方 山梨県 建設 木造住宅

八ヶ岳の麓から伝統的な日本建築で世界に挑む!素朴屋【企業探訪】 

手刻み、自然乾燥、昔ながらの伝統工法にこだわりながら世界進出に挑んでいる工務店が八ヶ岳南麓にある。2006年に創業し、軸組工法による住宅・非住宅の新築やリフォームなどを手がけている素朴屋(株)(山梨県北杜市、今井久志社長)だ。同社は、曲がりくねった木も使いこなす熟練の技術力に磨きをかけており、今年(2023年)3月にはベトナムに現地法人を設立した。急成長を続ける注目企業の近況をお伝えする。

手刻みなどにこだわり伝統技術を駆使、木を自然な形で活かす

素朴屋の創業者・今井久志社長(49歳)は、水産高等学校を卒業後、長野県木曽地域で林業に従事した後、カナダに渡ってログハウスの大工として働き、帰国後に山梨県内の森林組合等に就職。2006年に同社を立ち上げ、2014年に法人化を果たした。

起業した理由について、今井社長は、「産直工務店を展開していた取引先に曲がり材を納品したら『使用できない』と言われたのがきっかけ」と振り返り、「誰も使わないのならば自分で活かしてみようと独学で始めた」と話す。

創業時は農機具小屋の建て方からスタートし、経験等を重ねた後、2020年にモデルハウスとなる同社の事務所「製図場」を建設。木造平屋建ての「製図場」は、木材を瓦に用いた柿葺き仕様で、アカマツの太鼓梁や土壁で独自性の高い空間を構築している。

「8MATO」の外観、延床面積174.1m2

また、2022年に建てたワーキングプレイス「8MATO(やまと)」は、京都の清水寺のような舞台造となっており、遠目からでも目を引く。

同社は、プレカット加工や金物などを一切使用せず、熟練大工による墨付け、手刻みなど、昔ながらの建て方で直材から曲がり材までを適材適所に使いこなす。自然の木を活かすことにこだわる姿勢が評判を呼び、とくに富裕層からの注文が多い。

同社が用いる木材は、今井社長が自ら伐採するか、地元の(有)天女山(同)から直接購入し、清水製材所(同)に持ち込んで賃挽き加工している。「木の命を奪うのなら、それを昇華した形で活かさなければ」と今井社長は力を込める。

ベトナム現地法人が順調な滑り出し、10年後までの上場目指す

素朴屋の社員は、約25名。その3分の2以上は、ここ3年で採用した。社員を増やし事業の急拡大を図っているのは、海外展開に乗り出しているからだ。

同社は、日本木材輸出振興協会などの支援を受けて数年前から海外の展示会に出展しており、今年3月にはベトナムで現地法人「素朴屋ベトナム」を設立した。

「素朴屋ベトナム」は、ハノイ市の「ビンホームズ」内の大規模な日本庭園「ZenPark(ゼンパーク)」の中に拠点を置いている。今井社長によると、「日本建築に関心の高い層が多く訪れ、すでにいくつかの注文も受けている」と滑り出しは順調だ。設計士や大工を現地採用するなど、責任施工体制も着々と整備している。

ベトナムでオンライン取材に応じる今井久志・素朴屋社長

今井社長は、ベトナムに進出した狙いについて、「平均年齢が31〜33歳、人口も1億人まで伸び経済発展が著しいから」と語り、「ハノイ市などの大都市では都市計画が進むと同時に日本建築を好む層が多いこともわかってきた」と手応えを口にする。今後は、ドバイや東京都内にも事務所を構えることを検討しており、「いずれは住宅だけではなく資材や家具なども扱う貿易会社になり、10年後までには上場を果たしたい」と意欲をみせている。

(2023年3月2日取材)

(トップ画像=「製図場」の外観、延床面積66.1m2)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(1385文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。