征矢野建材が民事再生申請、負債約65億円 塩尻市で大型プロジェクト、綿半ホールディングスが再建支援

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征矢野建材が民事再生申請、負債約65億円 塩尻市で大型プロジェクト、綿半ホールディングスが再建支援

長野県塩尻市で進められている産官学連携の大型事業「信州F・POWERプロジェクト」の中核を担ってきた征矢野建材(株)(長野県松本市、櫻井秀弥・代表取締役)の経営が行き詰まり、8月9日付けで民事再生法の適用を申請した。負債総額は約65億円。同社は、松本市にプレカット工場、塩尻市に製材工場などを有する総合木質建材メーカーで、長野県内の工務店やハウスメーカーを中心に建築資材を供給してきた。社長の櫻井氏は、全国木造住宅機械プレカット協会の会長など要職をこなしており、長野県を代表する木材関連企業の1つとして知られる。

同社の事業再建に関しては、綿半ホールディングス(株)(東京都新宿区、本店=長野県飯田市、野原勇・代表取締役社長)が8月9日付けでスポンサー契約を締結したと発表、同社の営業はこれまで通り継続し、雇用も確保することにしている。

綿半HDは、グループ会社に(株)サイエンスホーム(静岡県浜松市)や(株)夢ハウス(新潟県聖籠町)などを擁し、原木の仕入れから製材・乾燥・プレカット・施工までを一貫して手がけることによって全国500以上の戸建木造住宅加盟店へ資材を供給し、非住宅木造建築物の需要開拓にも取り組んでいる。また、長野県産材の有効活用を通じて地域経済の活性化に貢献することも経営方針の1つに掲げている。

鳴り物入りの事業が曲がり角に、県は「継続支援チーム」設置

国際競争を勝ち抜ける県産材加工拠点づくりを目指し、鳴り物入りで進められてきた「信州F・POWERプロジェクト」が大きな曲がり角を迎えた。同プロジェクトの構想が発表されたのは、2012年9月。征矢野建材が事業主体となってフロア材などを生産する最新鋭の製材工場と木質バイオマス発電所を建設し、未利用広葉樹材やアカマツなどを有効活用して、海外も含めて新規需要を開拓する将来ビジョンを打ち出した。

2015年4月には、同プロジェクトの第1弾として製材工場を中心とする「ソヤノウッドパーク」が稼働を開始。竣工式には、長野県の阿部守一知事や共同出資者である大建工業(株)の億田正則社長らも顔を揃え、華々しいスタートを切った。

だが、生産ラインの調整や生産品目の見直しなどで、年間10万m3規模の原木消費能力をフルに発揮するには至らず、併設する木質バイオマス発電所(「ソヤノウッドパワー」)の操業開始も2020年10月と当初計画から5年半遅れ、燃料チップの不足問題などに直面していた。

同プロジェクトを牽引してきた征矢野建材が撤退を余儀なくされたことは、事業スキームの根本的な見直しが避けられないことを意味する。阿部知事は、8月10日の記者会見で、「事業継続支援チーム」を設置して対応を急ぐとした。同プロジェクトの構想段階から、関係者の間では、「成否のカギを握るのは原木の安定的な確保」と言われていた。ビジネスベースで利用可能な資源(原木)量を冷徹に見極めた上で、“身の丈に合った”事業にモデルチェンジすることが必要な状況になっている。

(2023年8月9日取材)()

『林政ニュース』編集部

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