大建工業が旭川に新開発の木質ボード工場を計画 トドマツを活用し、2024年度稼働目指す

大建工業が旭川に新開発の木質ボード工場を計画 トドマツを活用し、2024年度稼働目指す

大建工業(株)(大阪府大阪市、億田正則社長)*1は、国産材を使った新しい木質ボード工場の新設を検討している。5月20日に、北海道旭川市近郊を候補地とする事業計画を発表した。

同社が独自に開発した技術(特許出願中)によってトドマツを細かいストランド(切片)に加工し、非ホルムアルデヒド系(ノンホル)接着剤を使ってボード化する。寸法安定性や剛性などが優れ、表面が平滑で均質な色調が得られるため、建材や家具などの下地材としての利用が見込める。とくに、マーケットで不足している薄物・中厚ラワン合板の代替品として供給していくことにしている。

新工場の稼働開始は2024年度中を目標としており、市場調査などを踏まえて、今年末までに生産規模などの詳細を詰める。現時点では、年間に7~10万m3のトドマツ原木を使って5万m3程度の製品出荷を予定している。

工場の立地場所は、原木の集荷や雇用確保などの条件を勘案して旭川市近郊に絞り込んでいるが、事業化の可否を含めて、今年中にこれらの最終判断を行う。

用地取得や工場建設などに要する総事業費は約70億円になる見込み。工場稼働時には、最大で60名程度を新規雇用することにしている。

薄物・中厚ラワン合板の代替に、国産材の新たな“出口”つくる

大建工業は、4月に新素材事業準備室を新設し、国産材を使った新規事業の推進体制を強化した。同室長の吉田和雅氏によると、新開発した木質ボードは、「合板とMDFの中間に位置づけられる製品」になる。トドマツのA材及びB材クラスの原木を独自技術で薄く削ってストランドにし、ボードの原料にする。原木からの製品歩留まり率が高いことに加え、「曲げ強度や曲げ剛性など物性が安定しており、色目もよい」(吉田氏)化粧性の高い木質ボードになる。

吉田和雅・大建工業新素材事業準備室長

北米では広葉樹のアスペンを原料にしたOSB(配向性ストランドボード、Oriented Strand Board)が生産され、日本にも輸入されている。しかし、同社が開発した木質ボードは強度重視のOSBとは一線を画した特徴を持つ製品であり、独自の製品名をつけて生産していく方針だ。

市場では、地球環境問題への対応から「脱ラワン合板化」が進んでおり、代替製品へのニーズは高い。国産材を使った構造用合板などは普及してきているが、厚さ6㎜以下の薄物・中厚合板の分野では代替化が進んでいないため、同社の木質ボードが安定的に供給されるようになれば、国産材の新たな“出口”が開けることになる。

同社では、「新規木質ボードの事業化は、南洋材の保護や生態系の保全、国産木材の活用促進といった社会課題の解決につながることから、SDGsの達成に貢献できる」と位置づけており、新工場の操業が軌道に乗れば、生産規模の拡大や、トドマツ以外の樹種の利用も検討することにしている。

(トップ画像=道北のトドマツ林)

『林政ニュース』編集部

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