地に足のついた意向調査で森林づくりを支える東電用地【企業探訪】

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地に足のついた意向調査で森林づくりを支える東電用地【企業探訪】

東京電力グループの東電用地(株)(東京都荒川区、小河原克実社長)が森林整備に伴う“悩み事の解決”で存在感を増してきている。同社は、電力設備用地の取得や管理などで培ったノウハウを活かして、公共用地等に関するコンサルティングや空き家対策など社会インフラの整備・拡充をサポートする事業を展開している。その中で、森林経営管理制度の推進を重点分野の1つに位置づけており、すでに森林所有者の意向調査では全国トップレベルの実績を誇るまでになっている。

5年間で全国の約150自治体を支援、専用コールセンターも

JR日暮里駅から徒歩1分弱、抜群の好立地に40階建てのタワーマンションが聳え立つ。低層階には飲食店やドラッグストアなどが軒を連ね、終日賑わいをみせる。その5階に東電用地の本社がある。

東京の下町に本拠を置き、「東電」の冠を掲げる同社だが、事業エリアは全国に及ぶ。“エネルギー業界のガリバー”と呼ばれる東京電力の事業基盤をベースに、土地の専門家として様々なサポート業務を行っている。森林経営管理制度については、同制度がスタートした2019年度から市町村など自治体の支援を行っており、2023年度までの5年間で延べ149の自治体から業務委託を受けた。

東電用地が支援している自治体

同社が提供しているサービスのメインとなっているのが森林所有者を対象にした意向調査だ。同制度を動かすためには、まず所有者が何を考え・望んでいるかを調べなければならない。だが、マンパワーが不足する市町村にとって、この業務をこなすのは簡単ではない。そこで同社は、市町村からの要請を受けて、意向調査を代行するサービス体制を構築した。

同制度の開始にあわせて専用の「森林コールセンター」を立ち上げ、苦情対応などにも長けたベテランのオペレーターを配置。所有者アンケートから不明所有者の探索も含めて意向調査を行い、結果をまとめて図面に落とし込む一連の業務を引き受けている。この“ワンストップサービス”が市町村に支持され、約150件という受注実績につながっている。

約630名の交渉対応社員が現場で活躍、未整備森林の解消へ

東電用地は、前身の尾瀬林業(株)と東電不動産(株)が分社・統合して2008年10月に発足した。送電線などの電力設備は山間部に設置されることも多い。このため同社は、森林・林業と関わる用地交渉にも豊富な経験と実績を持つ。社員の平均経験年数は25年、交渉対応社員は約630名に上る。

森林意向調査では、調査票を送っても返事が来ないことが少なくない。その場合は自宅に電話し、訪問もして回答率を向上させている。地べたを這うような仕事だが、同社取締役の丸茂功一・事業開発本部長は、「私も若い頃はよくやっていましたよ」と事もなげに話す。

意向調査で実績を上げた同社にこれから期待されるのは、所有者の生の声を森林の集積・集約化に反映させ、未整備森林の解消にまでつなげることだ。丸茂取締役の下で自治体ニーズに応じた提案営業を担当している三島栄治・ソリューション営業グループマネージャーは、「そうした支援にまで踏み込んでいきたい」と前を向く。

すでに、布石は打っている。6月に林野庁OBの髙木茂氏(昭和53年入庁・北大林卒)を森林アドバイザーとして迎え入れた。「私達は、まだ林業のことがよくわかってないから」(丸茂取締役)という立ち位置から全国各地で活躍する林業のプロとも連携し、“次の実績”を求めていくことにしている。

東電用地という社名だけからは林業との接点が見えづらいが、実際は森林づくりを下支えする重要な役割を果たしている。

(2024年7月4日取材)

『林政ニュース』編集部

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