一昨年(2021年)7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害(第657号参照)を受けて制定された盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法、第657・672号参照)が5月26日に施行される。規制区域を森林や農地にまで広げ、単なる土捨て行為や土石の一時的な堆積も規制の対象とする。森林の無秩序な開発に歯止めをかける新たな法制度が実行段階に入る。
盛土規制法は、全国レベルで実施した盛土の総点検などを踏まえ、宅地造成等規制法を抜本的に改正して制定された。改正前の規制区域は国土の約2%しかカバーできていなかったが、今後は集落等から離れた森林にも“監視の目”が広く及ぶようになる。
新たな法制度を導入する目的として、「スキマのない規制」の実施を掲げており、都道府県知事と指定都市・中核市の長は、盛土等によって人家等に被害を及ぼしうるエリアを規制区域として指定する。規制区域内で一定規模以上の盛土や切土、土石の堆積などを行う場合は都道府県知事等の許可が必要となる。また、土地所有者等には、盛土等を安全に保つ責務が生じ、無許可行為や命令違反等に対しては罰則が科される(最大で懲役3年以下・罰金1,000万円以下・法人重科3億円以下)。
規制区域は、①宅地造成等工事規制区域と、②特定盛土等規制区域からなり(トップ画像参照)、基礎調査を行って都道府県知事等が指定する。指定にあたっては、「リスクのあるエリアはできるだけ広く規制区域に指定する」方針がとられており、とくに②の区域については、土石流の発生などを防ぐ観点から渓流等の上流域までカバーすることが必要となる。このため、「広い範囲の森林が(規制区域の)対象になる」(林野庁治山課保安林・盛土対策室)とみられている。