伊藤忠商事が向井工業を買収、北米への輸出事業を強化

伊藤忠商事が向井工業を買収、北米への輸出事業を強化

大手総合商社の伊藤忠商事(株)(東京都港区、石井敬太・代表取締役COO)がM&A(企業の合併・買収)を活用して国産スギを使った製材・輸出事業の強化に乗り出している。

新会社「FORJ(フォージュ)」がスギ製品の供給増を目指す

伊藤忠商事は、愛媛県の製材メーカー・向井工業(株)(大洲市、向井一仁・代表取締役)と新会社「FORJ(フォージュ)」(同市、市村孝幸・代表取締役社長)を昨年(2024年)10月に設立し、12月27日付けで向井工業から製材・輸出事業と工場などの関連資産を買収した(1月6日に発表、買収額は非開示)。

FORJの出資比率は、同社が90%、向井工業が10%で、これから同社主導で北米へのスギ製品輸出を拡大していく。

同社は、北米最大の木製フェンス製造会社であるAlta Forest Products LLCと、金網フェンス用パイプを取り扱っているMaster Halco, Incを子会社化しており、両社のルートを使って向井工業から購入したスギのフェンス材を北米で販売してきている。

北米では、フェンス材などの主原料であったウエスタンレッドシダーの需給がタイトになっており、スギに切り替える動きが目立ってきている。今後は、住宅用の2×4材や非住宅建築物の部材にスギが採用される可能性もある。このため、同社の北米市場開拓戦略の一環として、向井工業を傘下に収め、増産体制を整備していく方針だ。

規模拡大によるコスト削減が不可欠、高知県に工場新設の観測も

1957年創業の向井工業は、スギ・ヒノキの製材事業でスタートし、原料をベイマツからロシアアカマツに転換した後、2010年頃から国産材製材メーカーに復帰し、現在はスギを中心に年間約4万m3の原木を消費している。工場等で働いている35人の従業員は、新会社のFORJに移った。

向井社長は、以前からスギフェンス材などを増産したいとの意欲を示していた。だが、「今の工場や設備では大幅な増産は難しい」(県内関係者)のが実情だった。昨年秋には、倒産した稲田木工(株)(同市)の土地を購入するなど規模拡大への布石を打ってはいたが、日本を代表する商社の下に入ることで大型投資への視界が開けることになる。

今後、国際競争力のあるスギ製品を北米に大量輸出していくためには、量産化によるコストダウンが欠かせない。「向井社長は30万m3を目指すと口にすることもあった」(同)という。

量産体制の確立に向けて最大の課題となるのは、スギ原木の安定的な確保だ。愛媛県内だけで調達するのは現実的に難しいとみられており、関係者の間では高知県などに新たな工場を立ち上げる可能性が取り沙汰されている。

(2024年1月7日、20日取材)

(トップ画像=FORJ(旧向井工業)の工場、2025年1月20日撮影)

『林政ニュース』編集部

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