アカエゾマツ精油の商品化を進めるPine Grace(パイン・グレース)【出口をつくる!】

北海道 森林の新たな利用

アカエゾマツ精油の商品化を進めるPine Grace(パイン・グレース)【出口をつくる!】

江別市の一般社団法人Pine Grace(横田博代表理事)がアカエゾマツの精油を有効活用した商品を次々と世に送り出し、北海道林業の可能性を広げている。

看護師や獣医など異業種が集いアカエゾマツの特長を引き出す

2016年に発足したPine Graceは、5名の理事と約30名の会員で構成されている。メンバーは、大学教授や看護師、獣医師など多彩だ。酪農学園大学名誉教授でもある横田博代表理事は、活動方針について、「森林・樹木・草花の機能を有効活用して動物や人の健康福祉に貢献し、地域産業の発展を目指している」と話す。

この目的を達成するための“原動力”となっているのがアカエゾマツの精油だ。アカエゾマツ林の間伐時に出てくる枝葉などが廃棄されていることを知り、蒸留して有効用する道筋をつけてきた。

アカエゾマツの精油は、大学生106名を対象としたアンケートで87%が「香りが良い」と回答。精油を混ぜ込んだクリームを使った実験では、ストレスホルモンが5分の1に低下するなど高いリラックス効果が認められ、抗菌性の実験でも、青森ヒバに負けない優れた効果があることがわかっている。

「牛皮膚糸状菌症」を治すPGアロマやロウリュ水などが好評

アカエゾマツ精油の有用性をマーケット(市場)で具現化するために、Pine Graceは、医薬品メーカーや就労支援施設などと協業して商品化を進めており、そのラインナップは石鹸・入浴剤などにも及んでいる。とくに注力しているのが、動物用ワセリン「PGアロマ」、ペット用スプレー「スキンプロテクトスプレー」、サウナ用「阿寒ロウリュ水」だ。

「PGアロマ」は、日本全薬工業(株)(福島県郡山市)、(株)ベル・クール(北海道札幌市)と共同開発した。水虫菌の1種が牛に付着して脱毛する「牛皮膚糸状菌症」を改善する“特効薬”だ。アカエゾマツが持つ高い抗菌性が働き、塗布後約3週間で症状が改善し体毛が生え出す。横田代表理事は、「抗生剤が通用しない薬剤耐性菌が獣医業界でも広がっており、『PGアロマ』は有効打になる」と説明する。

アカエゾマツ精油とワセリンを混ぜた「PGアロマ」(価格は要問い合わせ)

「スキンプロテクトスプレー」は、散布すると雑菌の繁殖を防ぎ、蚊を寄せ付けず、感染症対策になる。リラックス効果も高い。

サウナブームを捉えて売り出したのが「阿寒ロウリュ水」。蒸留時に生成する芳香蒸留水と阿寒湖の伏流水をブレンドし、近隣のホテルのサウナ室用に販売している。使用したサウナ利用者からは、「呼吸が楽になった」、「咳が止まった」などの口コミが届いているという。

年間約273m3の枝葉を使用、男性用化粧品なども発売予定

Pine Graceは、年間約273m3のアカエゾマツの枝葉を消費している。容量36ℓの蒸留釜を使用し、1回に約1mの枝葉を約30本(5~8㎏)投入して、ヒーターで約5時間加熱すると精油は約40ml、芳香蒸留水は約4,000mlがとれる。枝葉は、前田一歩園財団(北海道釧路市)や近隣の林業会社、農林家から提供されている。 現在は、「SUSTAINABLE FOREST ACTION 2021」」で優秀賞を受賞した男性用化粧品の発売に向けて、(株)舗材サービス(北海道鹿部町)とともに体制整備を進めている。横田代表理事は、「人体用の水虫予防やアトピー性皮膚炎対策などの商品も開発し、需要を拡大して山元に利益還元していく」と意気込んでいる。

(2022年5月23日取材)

(トップ画像=アカエゾマツの精油、1本(3ml)3,300円)

『林政ニュース』編集部

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