渡良瀬流域構想を進めるコンチネンタルホームグループ【突撃レポート】

渡良瀬流域構想を進めるコンチネンタルホームグループ【突撃レポート】

森高千里のヒット曲「渡良瀬橋」が架かる渡良瀬川。北関東を流れる1級河川の流域には豊かな森林が広がり、江戸時代から船を使った木材輸送が盛んに行われてきた。この地の利を活かして、山づくりから住宅建築に至る「林業の6次産業化」を進めている企業がある。栃木県佐野市に本拠を構えるコンチネンタルホームグループ(廣澤英次・代表取締役)だ。

国産材100%の家を年に300棟供給、拠点は“開かれた工場”

コンチネンタルホームグループは、のような企業群で構成されており、この他に介護事業なども手がけている。グループ全体の年間売上高は約250億円、従業員数は約300名に及び、国産材100%の家を年間約300棟供給している。

地域環境貢献企業を掲げてSDGs宣言などをいち早く行っている同グループが注力しているのが「渡良瀬流域構想」の推進だ。地産地消の家づくりを基軸に、施主や地域住民を巻き込んだ木育活動や植林体験、出前授業などを展開し、流域全体を活性化させることを目指している。

渡良瀬林産の工場で生産されたラミナ

その拠点の1つが2016年に完成した渡良瀬林産(株)の“開かれた工場”。最新技術を導入して省力化・自動化を進めるとともに、人が移動する経路(動線)などを考慮したレイアウト設計となっており、原木(丸太)の皮剥きから選別、ノーマンツインバインドソーでの加工、検品、乾燥、プレーナー仕上げまでの工程を一筆書きのように無駄なく巡ることができる。同社は、この工場の見学会などを随時開催して、地元とのつながりを太くしている。

年間約2万7,000m2の原木を製品化、チップとおが粉は“小判”

渡良瀬林産の工場は、北関東自動車道佐野田沼インターチェンジから車で5分という好立地にあり、生産した製品を首都圏などに効率よく届けることができる。

年間の原木消費量は2万5,000m3から2万7,000m3で、樹種はスギが7割、ヒノキが3割。これを主にラミナと柱材に加工している。加工した製品の約4割はグループ内で使われ、残りの約6割はグループ以外の企業に外販している。

チップも貴重な収益源になっている

製品生産ラインの中央にはおが粉と端材の回収ラインがあり、端材はチップに加工している。同社の飯塚正喜・取締役専務(52歳)は、これがミソだと説明する。「製品販売で基本的な事業収益は確保できており、これにチップとおが粉の販売利益がそのままプラスされる。チップとおが粉は小判のようなもので、従業員はすべて回収しようと清掃を徹底する。その結果、工場全体がきれいになり生産性も上がる」。

エヌケーケーの工場で集成材化、CAD入力や端材の買取も

渡良瀬林産とともにコンチネンタルホームグループの生産・加工拠点となっているのがエヌケーケー(株)の工場だ。この工場では、渡良瀬林産から納入されたラミナを集成材に加工しており、年間の生産量は約6,600m3。このうち約3,000m3をグループのコンチネンタルホーム(株)に納め、約3,600m3は外販している。

同社では、かつてプレカット加工も行っていたが採算面から取り止め、今はプレカット設計図のCAD入力のみを手がけている。その一方で、取引先のプレカット工場から端材を買い取り、仕分けをして集成材に加工するサービスを続けている。このサービスを通じて各工場の稼働状況などが把握でき、常に約110%の生産量を維持できるように調整しているという。

エヌケーケーの工場で製品化された集成材

「安心と信頼の協定販売」を堅持、100haの森林取得目指す

エヌケーケーが担っている事業は、これだけではない。コンチネンタルホームグループ全体の原木調達と製品販売も行っている。その筆頭リーダーとなっているのが前出の飯塚専務であり、各社を横断して“1人商社”のような活動を続けている。

飯塚正喜・渡良瀬林産取締役専務(エヌケーケーの専務なども兼務している)

その飯塚専務が進めているのが「安心と信頼の協定販売」だ。最近の材価高騰を前にしても、「急な価格変更は一切しません」と明言しており、「信頼関係を反故(ほご)にするようなことをしたら長続きしないから」と語調を強める。

原木調達ではクオーター制を採用し、3か月ごとに契約を結んで購入条件を決めている。価格は、栃木県の協定販売価格と同水準に設定。手数料はとらず、原木の採材まで引き受けるなど素材生産業者がより利益を得られるようにして、集荷力を高めている。

製品の外販にあたってもクオーター制によって注文に応じた生産を行い、価格の安定化を図っている。

同グループは、2019年に渡良瀬森林開発(株)を立ち上げた。同社は造林、森林管理などを行っているが、現在、力を入れているのが森林の取得だ。すでに約65haを購入しており、今年度中に100haにまで広げる方針。飯塚専務は、「いずれはすべての構造材を自社有林から供給したい」と意欲をみせ、次のような展望を示した。「渡良瀬流域でも大径材化が進んでいる。大径材を活かすJAS製品を開発して、流域の森林資源を無駄なく有効活用できる道筋をつけたい」。

『林政ニュース』編集部

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