「フォレストジン」を発売!日本草木研究所【森の恵みを活かす】

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「フォレストジン」を発売!日本草木研究所【森の恵みを活かす】

スギやナラ、ネズミサシなど7種類の樹木を原料にした蒸留酒「フォレストジン(FOREST GIN)」が発売された。販売元は、調香師とブランディング企業代表の2名が立ち上げた日本草木研究所(東京都目黒区)。同研究所は、森の恵みを「食材」として活かしながら、新たな事業領域を広げている。

調香師とブランディング企業代表が樹木などを「食材」に活用

「フォレストジン」は、沖縄県、埼玉県、山梨県、和歌山県から採取したカラキ、ナラ、ハイビャクシン、ネズミサシ、ヒノキ、スギ、コウヤマキを原料に使用している。これら7樹種の枝葉などをベーススピリッツ(ジンの原料)にして約5日間漬け込み、佐賀県内の蒸留所で精製している。味わいは独特だ。7樹種の香りが鼻を突き抜け、何とも複雑な風味が口の中に広がる。アルコール度数が45%と高いので、炭酸などで割って飲むといい。スギの枝を漬け込めば香りなどが変わって、別の味わいが楽しめる。

日本草木研究所は、調香師としてクラフトコーラなどの商品開発に取り組んできた古谷知華氏と、ブランディング企業(株)HARKENの代表で武蔵野美術大学の講師なども兼任する木本梨絵氏が2021年11月に立ち上げた。運営は、両氏が共同代表をつとめる合同会社山伏(東京都目黒区)が担い、岐阜県や高知県などに研究拠点を置いて、国内の木々や野草を「食材」として活用する独自の事業を展開している。

あえてスギ・ヒノキを利用、独自の価格表をもとに原料調達

「フォレストジン」を生み出した古谷・木本両氏は、昨年(2021年)の夏から全国を巡って香りや味がよい樹種を探し求め、取引先を開拓してきた。そして、約30樹種を候補に選んだ中から、試験蒸留や配合調整などを重ねて7樹種に絞り込んだ。

古谷知華氏(左)と木本梨絵氏

木本氏は、「広葉樹だけでも『フォレストジン」は生産できたが、国内に多く植林されているスギ・ヒノキを有効活用したいと考えてラインナップに加えた。花粉症のイメージがあるスギ・ヒノキが美味しいと思ってもらえると嬉しい」と話す。

特筆されるのは、原料の調達方法だ。産地から購入する価格表には、調達時期や価格、枝葉や花、新芽、ウッドチップなどの情報が記載されている。古谷氏は、「レストランに卸す農家さんの食材価格表を参考に作成した。例えば、ナラの枝葉であればg単位で購入し、スギなどのウッドチップはm3換算で市場価格の30倍以上で調達している」と説明する。

ノンアル「ソーダ」なども販売、日用品も開発して輪を広げる

古谷氏は、「食のマーケットには西洋スパイスやハーブなどが数多く流通している。だが、日本産のスパイスは山椒など流通量が少ない」と指摘した上で、「森林に入ると“食材”にできる樹種が多い。これらは新たな嗜好品になると考え商品化を進めてきた」と続けた。日本草木研究所では、「フォレストジン」の他にノンアルコールドリンク「フォレストスープ(FOREST SYRUP)」や「フォレストソーダ(FOREST SODA)」なども販売している。

この5月からは企業向けのコンサルティング事業もスタートしており、木本氏は、「現在は不動産会社と連携して商品開発に取り組んでいる。山側の新たな収入源として協力の輪を広げていきたい」と意気込む。さらに両氏は、「スギやヒノキ、広葉樹を使ったハンドソープなどの日用品も開発していきたい」と声を揃えた。同研究所が中核となったニュービジネスの輪が一段と広がっていきそうだ。

(2022年7月1日取材)

(トップ画像=「フォレストジン」500ml、5,980円(税込)、左はスギ枝を漬け込んだもの)

『林政ニュース』編集部

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