国産広葉樹の利活用促進へ新プロジェクトがスタート

国産広葉樹の利活用促進へ新プロジェクトがスタート

林野庁は、国産広葉樹の利活用を促進するプロジェクトを新たに立ち上げる。自然保護や円安の影響などで海外から広葉樹材を安定的に輸入することが難しくなっている現状を踏まえ、国内の里山に生育している広葉樹林の整備と伐出材の用途開発を進め、資源として循環利用することを目指す。戦後の林政は、針葉樹の利活用を基軸にして各種の施策や事業を行ってきた。国(林野庁)が広葉樹対策に本格的に着手するのは、実質的に初めてとなる。

林野庁が初の本格対策に着手、付加価値向上と需要拡大目指す

日本の森林総蓄積(56億m3)のうち広葉樹は16億m3で約3割を占める。だが、年間の素材生産量は170万m3で、用材に占めるシェアは6%にとどまっている(参照)。広葉樹材の用途は、木材チップ用が9割、製材・合板等用が1割となっており、付加価値を高めながら需要を拡大することが課題になっている。

「里山広葉樹利活用推進会議」を新設

里山の広葉樹林は、かつては薪や肥料(落ち葉等)などの供給源として管理・利用されてきた。しかし、昭和30年代の燃料革命(石油など化石燃料への転換)以降は放置されがちになり、大径木化や衰弱が進み、ナラ枯れ被害なども発生している。

こうした現状にメスを入れる新たなプロジェクトは、有識者で構成する「里山広葉樹利活用推進会議」が中心となって進める。11月28・29日に“広葉樹のまちづくり”に取り組んでいる岐阜県飛騨市*1で初回会合を開き、重点課題の洗い出しや提言のとりまとめに着手する。同会議からの提言を受けて、広葉樹材の利用拡大に向けたサプライチェーンの構築や新製品の開発、人材の育成などに取り組む。

林野庁が行った都道府県アンケートの結果では、国産広葉樹材の特性を活かした家具などの新商品展開や加工施設の整備、製材・乾燥技術の確立などが需要創出には効果的とみられている(トップ画像参照)。

里山広葉樹利活用推進会議(仮称)のメンバー

土屋俊幸(林政審議会会長、NACS-J代表理事)▽都竹淳也(飛騨市長)▽末吉里花(エシカル協会代表)▽青井秀樹(森林総合研究所林業経営・政策研究領域木材利用動向分析担当チーム長)▽長野麻子((株)モリアゲ代表)▽海堀哲也(朝日ウッドテック(株)代表)▽加藤洋(カリモク家具(株)副社長)▽廣瀬直之(東京燃料林産(株)代表)▽鈴木信哉(ノースジャパン素材流通協同組合理事長)▽森松亮(富山県西部森林組合代表理事組合長)▽盛孝雄(ひだか南森林組合専務理事)▽西野文貴((株)グリーンエルム代表)

(2024年10月7日取材)

(トップ画像=広葉樹の利活用に関する都道府県アンケート結果)

『林政ニュース』編集部

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