【譲与税を追う】神奈川県川崎市

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【譲与税を追う】神奈川県川崎市

活用率100%をキープ!“木づかい”の最前線を駆け抜ける

古くから交通の要衝として発展し、日本有数の工業都市として知られる神奈川県川崎市(福田紀彦市長)。同市は、今年(2024年)で市制100周年を迎え、記念事業を展開している。

その一環として公共空間での国産材利用を進めており、3月15日には1日当たり約7万人が乗降するJR武蔵溝ノ口駅の南北自由通路を木質化する。主に埼玉県産のサワラ材を使って、改札口周辺をリニューアルし、通路には木製ベンチなどを設置する。木質化による二酸化炭素(CO2)固定量は0.82tになると試算しており、財源には森林環境譲与税を活用する予定だ。

同市の人口は約154万人。市面積は1万4,435haで、森林率は約5%と少ない。2022(令和4)年度は1億6,413万4,000円の譲与税が交付された。典型的な大都市である同市にとって、これだけの財源をどう使うかがテーマとなっているが、譲与税の制度がスタートした2019年度から活用率100%を達成し続けている。支出を先送りする基金への積み立てはゼロ。新たな財源をすべて使い切っているのは特筆ものだ。

具体的な使途は、表1のとおり。とくに、木材利用・普及啓発に力を入れており、公共及び民間施設の木造・木質化や木育イベントの開催などを進めている。

独自の補助制度で13の民間施設を木質化、駅前イベントも好評

川崎市は、譲与税の導入にあわせて、2019年度に「木材利用促進事業補助制度」を創設、多くの市民が訪れる施設や店舗などの木質化を支援する仕組みをつくった。補助率2分の1、補助限度額250万円までの要件で補助金を支給しており、これまでに13の民間施設を木質化した(表2)。

また、“木づかい”の裾野を広げるため、1日当たり約21万人が利用する川崎駅で、国産材の魅力体験イベント「川崎駅前優しい木のひろば」を継続的に開催している。担当の北村岳人・同市まちづくり局企画課長は、「イベント参加者からの満足度も高く、他の施設からも国産材のイベントを開きたいというオファーがある」と手応えを口にし、「来年度(2024年度)は複数の大型商業施設等でイベントを開催したい」と意欲的だ。

「川崎駅前優しい木のひろば」の様子(2021年撮影)

同市で譲与税の活用と“木づかい”が進んでいる背景には、2015年に発足した官民連携のプラットフォーム「木材利用促進フォーラム」*3の存在がある。同フォーラムには31の自治体や101の事業者、24の公益団体等が参画しており、横断的なネットワーク力と発信力の高さは際立っている。北村課長は、「当市は一大消費地として、林産地や民間事業者と連携しながら国産材の良さや森林の大切さを伝えていく使命がある」との認識を示し、「合言葉は『都市に森をつくる』です」と力を込めた。

(2024年2月10日取材)

(トップ画像=3月15日に完成する武蔵溝ノ口駅の木質化イメージ、画像提供=川崎市)

『林政ニュース』編集部

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