2023年4月1日付け林野庁人事異動解説 関東・中部森林管理局長などが動く【緑風対談】

全国 人事

2023年4月1日付け林野庁人事異動解説 関東・中部森林管理局長などが動く【緑風対談】

2023年4月1日付けで林野庁の人事異動が発令された。はてさて、どんな顔ぶれが動いたのか──。

中部局長にベテランの今泉氏、関口氏は整備センター所長に

新年度(2023年度)がスタートし、4月1日付けで林野庁の人事異動が発令された。長官など首脳級に動きはなく、全般的に淡々と人材の再配置が行われた。ただその中で、異例の降格発令もあった。それも含めて、目立った人物を追っていこう。なお、首脳級が代わる大型人事は、通常国会終了後の6月末から7月上旬に行われる見通しだ。

4月人事では、技官ポストの中部森林管理局長と、事務官ポストの関東森林管理局長がそれぞれ交代した。
中部局長の関口高士氏(平成2年入庁・北大卒)は、在任1年弱で森林研究・整備機構の理事に転じ、後任として同機構理事の今泉裕治氏(昭和62年・東大)が中部局長に就任した。
局長と同機構の理事が入れ替わったかたちだが、関口氏が着任したのは森林業務担当の理事で、対外的には森林整備センターの所長で通っている。一方、今泉氏がつとめていた理事は育種事業・森林バイオ担当で、林木育種センターの所長といった方がわかりやすい。

今泉裕治氏

新・中部局長となった今泉氏は、本庁で森林利用課長などを任され、淡々と職務を遂行する姿が印象的だった。62年入庁組からは3人目の局長になる。すでに59歳とベテランの域に入っており、本庁の幹部からは、「今までの経験を現場で活かして欲しい」との期待がかかる。局長と理事はほぼ同格だが、一国一城の主である局長はやはり重みが違う。今泉氏も意気に感じて指揮を執るだろう。

異例の降格も事務官なら「起きること」、関東局長に志知氏

関東局長の交代には、周囲がざわついた。一昨年(2021年)10月から同ポストを担ってきた赤崎暢彦(のぶひこ氏(平成2年・東大法)が同機構の総括審議役(人事・労務担当)に発令されたからだ。総括審議役は事務方のトップポストだが、局長や理事よりはワンランク下になる。要するに、降格なのである。

この異動には、何かあったのかといぶかる向きも出たが、事務官幹部に聞くと、赤崎氏に落ち度があったわけではない。もう事務官の世界では「人事の細かいミシン目はなくなっている」ので、降格発令も「巡り合わせで起きること」なのだという。この幹部は、「技官のように秩序立っているといいんですけどね」と呟いた。

志知雄一氏

赤崎氏の後任として、関東局長には同機構理事で森林整備センター所長の志知雄一氏(平成2年・大阪大法)が就任した。志知氏は、一昨年4月に中国四国農政局次長から同機構に入り、2年の任期を全うしての異動となった。真面目で温厚、とくに「丁寧な人」という周囲の評が目立つ。林業問題にも強い関心を示しており、国有林の現場を預かる関東局長は、56歳の志知氏にとってやりがいのあるポストとなる。

治山課長に満を持して河合氏登場、新設の盛土対策室長には諏訪氏を起用

さて、技官の人事異動に戻ろう。今泉氏の後任として、同機構理事・林木育種センター所長に発令されたのは、本庁治山課長の箕輪富男氏(平成3年・岩手大)。箕輪氏は、森林利用課長として森林吸収源対策、続いて治山課長では盛土問題など難しい案件に直面したが、「そつなくこなしていた」と上司は評価する。飄々としたキャラクターが持ち味だ。

箕輪氏からバトンを受けて治山課長に就任したのは、研究指導課森林保護対策室長の河合正宏氏(平成3年・京都府大・砂防)。河合氏は、治山課で課長補佐を2つこなした上に総括と山地災害対策室長もつとめた。文字通り、この道のプロであり、満を持しての課長進出といえる。容貌は少々いかついが、話すと愛嬌があって親しみが増す。休日はジムに通って、体を鍛えているという。

河合正宏氏

治山課には、新たに「保安林・盛土対策室」が設置された。その初代室長に起用されたのは、同課保安林調整官の諏訪幹夫氏(平成8年・北大)。諏訪氏は、これまでも盛土問題や林地開発許可制度の見直しなどに取り組んできており、まさに「はまり役」。明朗快活な人物で、難しい案件も厭わず精力的にこなす。趣味はランニング、主にハーフマラソンのランナーとして汗を流している。

県出向者が交代、山梨に岸氏、広島に川崎氏、熊本に宮脇氏

このほか本庁の室長や森林管理局の次長、部長などにも動きがあったが、紙幅の関係もあるので、最後に県に派遣された出向者の顔ぶれをみておこう。
山梨県森林整備課長の上野真一氏(平成10年・山形大)が本庁に戻り、木材利用課の総括課長補佐に着任した。上野氏に代わって山梨県に出たのは、業務課総括課長補佐の功規(よしのり)氏(平成11年・筑波大院)。同県の林政部技監、つまり技術系のトップに就任した。岸氏は、本庁で整備課、治山課、経営課の課長補佐をこなしており、経験豊富。派手な言動はなく、クールな人柄で、仕事師タイプといえる。群馬県太田市で育ち、県立太田高校を卒業した。時間があると、温泉旅行でリフレッシュしているという。

広島県の林業課長に出ていた井堀秀雄氏(平成14年・農工大院)が3年ぶりに林野庁に戻り、企画課課長補佐(企画第1班担当)に就いた。井堀氏の後任に起用されたのは、整備課課長補佐(間伐推進班担当)の川﨑耕作氏(平成16年・静岡大院)。川崎氏は、これまで治山課や整備課など川上部門の行政に携わることが多かったが、広島県では川下関係の業務もカバーする。県庁勤務は初めてであり、「二重の意味で楽しみです」と柔和に語る。3人の娘さんがいる43歳のよきパパだ。長崎市出身で県立長崎西高校卒。広島県とは、ご尊父が三菱重工広島工場で働いていた縁があるという。

熊本県森林整備課長の笹木征道氏(平成15年・岩手大)が出向を終えて戻ってきたが、林野庁ではなく、環境省の関東地方環境事務所保全統括官に就いた。笹木氏の後を受けて熊本入りしたのは、企画課長補佐(企画第1班担当)の宮脇慈(しげる)氏(平成16年・名古屋大院)。九州勤務は初めてで、現場に出るのも14年ぶりだという。宮脇氏は、人当たりがよく、仕事の要点を掴むのが早いので、新天地にもすぐに馴染むだろう。学生時代からレコード収集に凝っており、好きなジャンルはロックやソウルなど。とくに、イギリスの3大ロックバンドの1つに数えられるザ・フーがお気に入りだという。出身は島根県の大田市、県立大田高校の卒業生だ。

(2023年3月28~30日取材)

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

この記事は有料記事(2887文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。