国有林野事業の債務返済額が2023年度は368億円に増え、2013年度の一般会計化以降では最高額になった。
2013年度に国有林野事業特別会計を廃止して一般会計化した際、1兆2,721億円に膨らんでいた累積債務は「債務管理特別会計」に移し、国有林材の販売などで得られる林産物収入等によって2052年度までに返済することにした。
返済額は段階的に増やしていくことにしており、2023年度から5年間は年平均370億円の返済を計画している*1。とりあえず2023年度はこの“ノルマ”をクリアしたかたちだが、人口減による住宅市場の縮小などで国有林材の販売収入を増やしていくのは容易ではなく、予断を許さない状況となっている。
林政審議会(土屋俊幸会長)が9月7日に了承した2023年度の「国有林野の管理経営に関する基本計画の実施状況」(「国有林ミニ白書」)の中で、債務の返済や国有林材の販売などに関する最新の実績値が明らかになった。
2023年度は、林産物収入等から所要経費を差し引いた368億円(前年度(2022年度)は187億円)を返済に充て、累積債務返済額は1,913億円と2,000億円に近づいてきた(トップ画像参照)。
林野庁は、長期に及ぶ債務返済に関する試算値を公表しており、第1期(2013~2017年度)は年平均90億円、第2期(2018~2022年度)は同200億円、第3期(2023~2027年度)は同370億円を返済することにしている。
これまではこの試算値に沿った返済を行ってきているが、今後は収入確保面での厳しさが増すことに加え、第4期(2028~2032年度)の年平均返済額は420億円とさらに引き上げることを計画しており、新たな安定財源を見出すことが必要な状況になってきている。
2023年度の国有林材供給量は500万m3、ベースラインの役割を担う
国有林野事業の“ドル箱”である国有林材の2023年度の供給量は500万m3(素材(丸太)換算)で、前年度より47万m3増えた。

2023年度は845万m3の立木を伐採し、立木販売や森林整備事業などを経て500万m3がマーケットで売買された(図参照)。
また、国産材の需要拡大に取り組む製材・集成材・合板工場などと協定取引を行う「システム販売」の供給量は、前年度より5万m3増の182万m3だった。
国有林材の供給にあたっては、昨年(2023年)11月に開催された中央国有林材供給調整検討委員会で、「木材需給の先行きが不透明な中でも地域における木材供給のベースラインとして(中略)安定供給に取り組む」ことが必要とされた。
これを踏まえて、国有林材の供給では、収入確保と市況の安定化という“二兎を追う”ことが求められている。7月には初めて“平時”でも「予防的措置」*2を導入する方針を明らかにするなど、弾力的かつ機動的な国有林材の供給を実践する段階に入っている。
(2024年9月7日取材)
(トップ画像=国有林野事業の債務返済状況)

『林政ニュース』編集部
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