国有林の「基本計画」改定へ、新局面に入る 債務返済額の引き上げで収入増が課題に

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国有林の「基本計画」改定へ、新局面に入る 債務返済額の引き上げで収入増が課題に

2013(平成25)年度に一般会計化した国有林野事業の管理経営が新たな局面に入る。5年ごとに策定している「管理経営基本計画」の改定時期を迎えていることに加え、今年度(2023年度)から債務の返済額を引き上げていくことを計画しているからだ。生物多様性の保全や山地災害の防止など公益重視の要請に応えながら、林産物販売を中心とした収入を増やしていく必要があり、難しい舵取りが迫られている。

2013年度に国有林野事業を特別会計から一般会計に切り替えた際、1兆2,721億円に膨らんでいた累積債務については「債務管理特別会計」に移して林産物収入などによって返済し、国民負担を発生させない仕組みとした。これを踏まえて、林野庁が策定している計画では、5年単位で返済額を段階的に増やしていき、2048(令和30)年度で債務の返済を完了することにしている(参照)。

これまでの返済実績はトップ画像のようになっており、ほぼ計画どおりのペースで進んできている。ただし、今年度から5年間の年平均返済額は、前年度(2022年度)までと比べて85%増の370億円に大きく増え、2028(令和10)年度以降は400億円台に乗せることにしており、林産物販売の強化などによる増収対策を講じることが不可欠となっている。

国有林材販売価格のアップが課題、債務返済計画の見直しも

林産物収入確保の裏づけとなる国有林材の供給量は、のように推移してきている。

コロナ禍の対応で需給調整を行った2020(令和2)年度と翌21(令和3)年度を除き、2015(平成27)年度以降は400万m3台をキープしており、直近の2022年度は、453万m3の国有林材を供給して390億円の収入を上げている。ただし、これから供給量(=伐出量)を大幅に増やせる状況にはなく、川下側のニーズに応えながら、販売価格を高めていくことが課題になる。

国有林野事業の管理経営に関しては、農林水産大臣が5年ごとに10年間の「基本計画」を策定することが根拠法(国有林野管理経営法)で定められている。現行計画は2018(平成30)年12月につくられ、5年が経過することから、林野庁は年末までに新しい「基本計画」を策定する作業を進めている。新「基本計画」では、岸田政権が力を入れている花粉症対策*1や、生物多様性保全の国際目標である「30by30」*2への協力など新たな政策課題を盛り込みながら、約1兆2,800億円に及ぶ債務を着実に返済していける“道筋”を描き出すことがテーマになる。時代の変化を踏まえて、“過去の負債”をどのように処理していくかが、2021年度に立てた債務返済計画を柔軟に見直すことも必要な段階に来ている。

(2023年9月12日取材)

(トップ画像=国有林野事業の債務返済実績、林政審議会資料)

『林政ニュース』編集部

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