政府は5月30日の閣議で、2022(令和4)年度の『森林・林業白書』を決定、公表した。「気候変動に対応した治山対策」について特集し、森林・林業施策全体で災害に強い地域づくりを進める方針を打ち出した。
『白書』が特集テーマで「治山」を取り上げたのは初めて。その理由について、担当の林野庁企画課は、「気候変動の影響で雨の降り方が変わり、山地災害の激甚化などが進んでいる。国民生活を守るためにも、改めて治山事業の役割と今後の方向性を示す必要があった」と話す。
『白書』によると、近年の山地災害は1か所当たりの被害額が増大しており、発生形態についても、①表層よりもやや深い層から崩壊、②渓流の縦横侵食量が増加、③線状降水帯の発生等による災害の同時多発化、④洪水被害・流木災害の激甚化──などの変化がみられる。
これらを踏まえた今後の治山対策は、国土強靭化基本計画や森林・林業基本計画に基づき、流域治水との連携や治山施設の長寿命化、3DレーザスキャナやICTバックホウなど先進技術・機器の活用によって推進するとし、森林を「緑の社会資本」として整備することが必要と強調した。
このほかトピックスのコーナーでは、太陽光発電の拡大に歯止めをかける林地開発許可制度の規制強化(第680号参照)や、しいたけの植菌地に関する原産地表示制度の導入(第675号参照)、国有林野で本格的にスタートした樹木採取権制度(第598・606号参照)などについて解説した。 また、これまでの『白書』を一括検索できるWEBイトも用意した。
(2023年5月30日取材)
『林政ニュース』編集部
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