坪145万円の純木造8階建てビルが完成─AQ Group

坪145万円の純木造8階建てビルが完成─AQ Group

(株)AQ Group(東京都新宿区、宮沢俊哉社長、旧アキュラホーム)が埼玉県さいたま市で建設を進めていた純木造8階建ての本社ビル*1が完成し、4月22日にお披露目会(現場見学会)が行われた。

本社ビルの着工時に宮沢社長は、木造ビルを普及していくためにはコストダウンが必須であり、「5階までなら坪当たり150万円を目指したい」との目標を口にしていた*2。

完成した本社ビルの建築費は約26億6,000万円(『林政ニュース』編集部試算)で、坪単価は約145万円。一般流通材やプレカット技術などを活かすことで、「同規模のSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造ビルと比べて建築費を4分の3まで抑えることができた」(同社担当者)という。

8階建て本社ビルについて説明する宮沢俊哉・AQ Group社長

本社ビルの最大のウリは、匠の技を駆使して木を現(あらわ)しで用いながら耐火・耐震基準をクリアしていること。一般的なビルで設置される免震装置は使わず、木組みの構造体だけで設計・施工した。また、住宅用耐力壁の14倍の強度を持つ「高耐力組子格子耐力壁」や、8倍の強度を持つ「引きボルト式ラーメン」、「相欠き合わせ柱式ラーメン」などによって、建物全体の強度を高めている。

新社屋の外観

木材の総使用量は1,695m3で、このうち36.6%が国産材。二酸化炭素(CO2)固定量は1,444tと試算している。

地場工務店にノウハウ提供、「木造建築技術研究所」も整備

同社は、木造の街並み復興を目指す「Re:Tree プロジェクト」を進めており、「普及型純木造ビル」のノウハウを地域工務店や中小ゼネコンに提供していくことにしている。5月から賛同者を「フォレストビルダー」として組織化し始めた。

木造4階建てビルの建築コストは坪120万円程度との目安も示しており、宮沢社長は、「4・5階建ての純木造ビルを全国展開していく。技術の習熟度が高まれば坪100万円も夢ではない」と意欲を隠さない。

同社の2022年度の年間売上高(見込額)は601億円。例年、売上高の約1割を研究開発費に充て、技術開発を加速しており、新たな拠点として、本社ビルから7.5kmの距離にある上尾市内に「木造建築技術研究所」を整備中だ。

構造実験棟の延床面積は512m2、木材使用量は84.48m3、国産材の使用量は31.0m3

同研究所は、構造実験棟や施工効率化センター、合理化検証エリアなどを一体的に備える計画であり、先陣を切って、木造平屋建ての構造実験棟が5月中にオープンする。実験棟の構造材にはすべて住宅用流通材を使用し、AQトラス(特許出願中)で16mスパンの大空間を構築した棟内には、面内せん断試験機や圧縮引張試験機などを設置する。続いて、年末には施工効率化センターを開設し、配送までを視野に入れた合理化システムの研究に着手する予定だ。

この“勢い”が「坪100万円の木造ビル」にどう結実していくのか、今後の帰趨が注目される。

(2024年4月22日取材)

(トップ画像=純木造8階建て本社ビルの内観)

『林政ニュース』編集部

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