(前編)国有林の成長資源・広葉樹を活かす─すべての樹種で蓄積が増加中

全国 国有林 統計・調査

国有林内で成長してきた広葉樹に対する注目度が上昇している。これまでは、「どこにどんな木があるのか?」、「あっても何に使えるのか?」という手探りの状況が続いていたが、最新の調査で“使える資源”としてのポテンシャルと、攻めるべきマーケットが見えてきた。ポイントを2回に分けてお伝えする。

1988年度の4億m3が2015年度は5億m3に、国有林総蓄積量の43%を占める

3月9日に東京都江東区の木材会館で、「多様な木材需要に対応するための需給動向調査」に関する報告会が開催された。同調査は、林野庁の今年度(2017(平成29)年度)委託事業としてアジア航測(株)が事業主体となって実施。国有林内の広葉樹資源量などに関する最新のデータを収集・分析し、販路開拓の方途を探ることを目的に行われた。

当日、参加者に示されたデータの中で、一際注目を集めたのは、国有林に生育している広葉樹資源量の推移だった。トップ画像のように、1988(昭和63)年度には約4億m3強だったものが、2015(平成27)年度には約5億m3と1億m3も増加している。これは国有林総蓄積量の43%に相当し、民有林の広葉樹比率25%よりも高い水準になっている。

国有林で増え続けている広葉樹資源を樹種別にみると、最も多いのは様々な樹種が混ざっている「その他L」で2億5,300万 m3(1988年度は1億9,000万m3)、次いで、ブナが1億2万m3(同9,700万m3)、以下、カンバ類が6,400万m3(同5,200万m3)、ナラ類が4,300万m3(同3,800万m3)となっており、すべての樹種が着実に増加している。

最大の宝庫は北海道森林管理局、利用可能量のトップはブナ

では、これだけの広葉樹資源は国有林のどこにあるのか? 管轄別にみると、北海道森林管理局が最も多く1億600万m3(内訳は、その他Lが42%、ダケカンバ18%、ミズナラ15%、ブナ5%)、続いて、東北局が5,400万m3(ブナ44%、その他L23%、ミズナラ12%)、関東局が1,700万m3(その他L32%、ブナ28%、ミズナラ8%)、九州局が1,600万m3(その他L38%、シイノキ26%、カシ類22%)。全国を俯瞰すると、ダケカンバは北海道、ブナ・トチノキは東北、シイノキ・カシ類は九州に多い。

次に、樹種別蓄積と利用可能資源量(注)の関係をみると、最も多いのはブナで蓄積が9,700万m3・利用可能資源量が3,800万m3、以下、ミズナラが5,800万m3・2,600万m3、ダケカンバが5,200万m3・2,100万m3、ウダイカンバが1,300万m3・600万m3、シイノキが1,300万m3・500万m3、イタヤカエデが1,200万m3・500万m3、カシ類が1,200万m3・500万m3となっている。

(注)利用可能資源量とは、法令等による伐採種制限のない林分でha当たり蓄積量100m3以上の林分のこと(胸高直径24㎝以上、末口径20㎝を想定)。

全体伐採量は1948年度の水準に近づく、「その他L」の割合が増加

このように充実してきている広葉樹資源は、どの程度伐採・利用されているのか。国有林における伐採量の推移を振り返ると、1948(昭和23)年度には針葉樹・広葉樹をあわせて約800万m3が伐り出され、このうち25%程度(約200万m3)が広葉樹だった。

その後、戦後の奥地天然林開発と拡大造林政策によって、1969(昭和44)年度~1972(昭和47)年度の国有林伐採量は約2,000万m3とピークを極め、このうち広葉樹は約900万m3と半分近くを占めていた。

ここを頂点に国有林の伐採量は減少の一途を辿り、広葉樹の伐採量も落ち込んでいったのだが、近年は国有林の伐採量が反転上昇のトレンドに入っている。2014(平成26)年度の全体伐採量は600万m3まで回復しており、広葉樹の比率も下げ止まりの兆しをみせている。

なお、国有林で伐採されている広葉樹の樹種別構成をみると、1965(昭和40)年度は、その他L43%、ブナ24%、ナラ14%、シナノキ9%という割合だったが、2014年度は、その他L81%、ナラ6%、シナノキ5%、ヤチダモ3%と変化しており、ブナの減少とその他Lの増加が目立っている。

広葉樹の自給率はわずか1割、9割がチップ用でいいのか

国有林内で広葉樹がこれだけ育ってきたことは、伐採・利用面で新たな段階に入ってきたことを意味する。そもそも日本は湿潤な気候で広葉樹が豊富であり、古くから300種以上を利用してきた。家具、建築材、楽器、刳り物など、樹種の特性に応じて多方面に活用してきた“実績”があり、これを現代のマーケットでどう“復活”させるかが問われる状況になっている。

3月9日の報告会で披露された資料の中で、参加者の関心を集めたのが図2だ。現在の広葉樹材の需要量は約2,930万m3であり、このうち3分の2がチップ用(1,910万m3)、3割が合板用(866万m3)で、製材用はわずか104万m3しかない。

我が国の広葉樹材需要構造(2015年)

一方、供給面をみると、国産材は224万m3で自給率がわずか1割。しかも、国産広葉樹の9割はチップ用で、製材向けはわずか5%(約10万m3)しかない。

かりに、家具や内装向けとなる製材用の広葉樹をすべて国産で賄おうとするならば、現状の10万m3に90万m3を上乗せすればよいことになる。充実してきている資源量に照らせば、十分手が届きそうな数字だが、現実的に増産は可能なのか。後編で検証していく。

(2017年3月9日取材)

(トップ画像=国有林における広葉樹樹種別資源量の推移)

『林政ニュース』編集部

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