大径材を活かしきる“小さな大工場”・しそうの森の木【突撃レポート】

兵庫県 木材・木製品製造業

兵庫県宍粟市に拠点を置く(株)しそうの森の木(三渡眞介社長)は、小規模なJAS構造材メーカーの1つだ。ただし、同社は、構造材だけではなく、CLT(直交集成板)や造作材なども生産している。また、増加するスギ大径材を活かすために開発したオリジナル製品「Mパネル」が2024年にウッドデザイン賞を受賞するなど、豊かな発想力で地域材利用の裾野を広げている。

独自開発の「Mパネル」と「上下芯去り構造材」で歩留まり率60

しそうの森の木が開発した「Mパネル」は、スギ柾目材を用いた3層パネルで、赤身を活かした仕上がりとなっている。サイズは、最大長さが4,000mm、最大幅は1,200mm、厚さは36mmと24mmがある。強度や施工性が優れ、化粧材としても使用できるので、和洋問わず様々な空間で使われている。

「Mパネル」が生み出された背景には、地元・宍粟市周辺における“山の変化”がある。以前は直径30cm以下の原木(丸太)から無節の柱や梁などを採っていたが、大径化とともに節が目立つようになり、品質も低下してきた。そこで同社は、「Mパネル」に加工することで、大径材を活かす道を拓いた。

併せて、「上下芯去り構造材」も開発し、「Mパネル」とともに普及を進めている。

化粧用にも使える「上下芯去り構造材」

「上下芯去り構造材」は、化粧構造材としても使える柾目の平角材だ。県林業技術センターとの共同試験によって、芯持ち材と同等の強度があることを確認しており、昨年(2025年)6月には構造用製材のJAS認証を日本で初めて取得した。

同社は、「Mパネル」や「上下芯去り構造材」を中心に大径材をムダなく使いこなす木取りを追求しており、すでに歩留まり率は60%近くまで高まっている。同社の三渡(みわたり)保典・専務取締役は、「今後も増加していく大径材を有効活用して好循環をつくりたい」と意欲をみせている。

協同組合としてスタートし、再出発をして年商3億円にまで成長

しそうの森の木は、製材だけでなくプレカット、施工まで手がけており、顧客ニーズにワンストップで対応できる。年商は約3億円、年間原木消費量は約5,000m3、社員は約20名が在籍している。

原木の調達では、地域の素材生産業者5者と直接取引をしている。年間の生産計画に基づいて事前発注することで、市場を介さずに安定的に原木を確保している。

宍粟市周辺で流通している原木は、B材が主流を占める。その中でA材を高単価で仕入れる同社は貴重な存在であり、取引先からは「しそうの森の木があるから今の材価が保たれている」と頼りにされている。

同社の起源は、2002年。原木を適正価格で購入し、山元に利益還元するとの志を共にする5社が集まり、協同組合としてスタートした。だが、時の経過とともにメンバー間の事業方針がすれ違い始めたため、2015年に三渡専務が所属していた(株)山弘(宍粟市、三渡眞介社長)の100%子会社として再出発した。

最適木取りを保証する「規格製材」、未経験者だけで工場を運営

しそうの森の木のリーダーである三渡専務は、大学卒業後、準大手ゼネコンで勤務し、談合坂サービスエリア(山梨県上野原市)や北関東自動車道の整備など大型プロジェクトに携わった。将来の幹部候補として順調にキャリアを重ねていたが、帰省するたびに地域が疲弊していく姿を目の当たりにしていた。実父である故・三渡圭介・山弘会長からも「帰ってきて欲しい」と言われ、帰郷を決意した。

三渡専務の持ち味は、数値化・言語化へのこだわりが強いこと。経営面での曖昧さを極力排除し、客観的に“見える化”する努力を怠らない。その象徴的なものが独自に編み出した「規格製材」だ。

工場内にある「規格製材」の冊子

規格製材とは、最適な木取りを実践する手法のこと。原木の径級や長さなどから約150種のパターンを体系化し、需要側から逆算して計画生産する。同社は、過去の取引データから製品ごとの必要量を弾き出している。例えば、5mの平角なら新築1棟当たり0.0053本といった具合だ。これらの数値をもとに年間の必要量を割り出して、原木の調達にも活かしている。

規格製材が体系化されている同社では、「19-A-②を30本、38-B-①を20本」と伝えるだけで、未経験者でも最適な製材加工ができる。事実、同社の工場を運営しているのは、未経験者ばかり。三渡専務は、「経験者は入れない。固定観念があると新しいことはできないから」とまで言う。

ノウハウを隠さず共有し、「僕が死んでも困らない会社」目指す

しそうの森の木には、全国から多くの視察者がやって来る。業務の合間を縫って応対する三渡専務は、「技術はすべて公開する」ことをポリシーにしており、約150種の製材パターンや原価計算の方法もオープンにしている。

工場内にある機械はほとんど中古で、床はコンクリート打ちっぱなし。「日本一みすぼらしいJAS工場でしょう」と三渡専務は笑うが、続けて、「巨額を投資した工場ではできないことが小さい工場にはたくさんある」と自負をみせる。

三渡保典・しそうの森の木専務取締役

三渡専務が目指すのは、「僕が死んでも困らない会社」。独自に築き上げてきた経営ノウハウなどを“仕組み化”して共有し、「全国の誰でも地域の森林資源を活かせるようにしたい」と話している。

(2025年10月17日、2026年2月3日取材)

(トップ画像=「Mパネル」の使用例、画像提供:しそうの森の木)

『林政ニュース』編集部

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