家具には不向きのスギ、ヒノキ、カラマツでブランド展開
家具用材に適しているのは、広葉樹。これが業界の常識だが、イトーキは、あえてスギ、ヒノキ、カラマツといった針葉樹をメイン材料に採用している。
同社が手がけている地域材家具製品のブランド名は、「エコニファ(Econifa)」。エコロジー(Eco)とコニファー(Conifer、針葉樹)を組み合わせた造語だ。国内森林の循環利用を進めるためには、何よりも針葉樹(人工林)の活用が不可欠という同社の認識とこだわりが、このネーミングから窺える。

同社がエコニファを本格展開し始めたのは、一昨年5月のこと。だが、仕掛け人であるエコニファ開発推進室長の末宗浩一(53歳)が、国内林業の窮状を肌で感じたのは、それに先立つ平成10年頃だったという。当時、末宗は、兵庫県で営業をしていた。同県の森林(民有林)面積は約53万haでその4割が人工林。しかし、林業の不振で地元の人も山に目を向けなくなっており、「このままでは地域がなくなると思った」と振り返る。
一方で、オフィス家具メーカー間の競争は激しく、他社とは違った差別化戦略を打ち出すことが迫られていた。そこで末宗は、県産材を使った製品を開発し、「都市部の見えるところで使ってもらう」ことを考えた。だが、いざチャレンジしてみると、そこには1つの壁があった。


「普通の製品」にすることで山と都会のギャップを埋める
「山側が言っている製品というのは、都会に来ると素材なんです」「都会は素材は求めていない。このギャップを何とか埋めていかないとダメなんです」――末宗の問題意識は明確だ。
エコニファの製品群に共通するのは、高いデザイン性。国産材をこれみよがしに使うことはせず、「普通に受け入れてもらう」ことを重視している。だから、IT企業や電気メーカーなどの木とは縁遠いオフィスでも自然に使ってもらえているという。
また、「普通の製品」にするためには、機能性や耐久性などを、スチール家具並みにしなければならない。とくに、家具に不向きな針葉樹を用いているだけに、木材の調達から加工までの工程管理が重要になる。
その中でも、末宗がとくに神経を使っているのが、乾燥だ。求める含水率は8%以下。このレベルにしないと、ビル内などで使っているうちに狂いが出てくるという。
末宗は、全国各地に足を運び、乾燥技術の高い製材所などとのネットワークを築いてきた。そして、1つの結論に辿りついた。「乾燥は人だ」。乾燥機や乾燥方法はさまざまあるが、その得失を見極め、地元の木材の特徴を活かして最適の乾燥を行う技術は、一朝一夕に習得できるものではない。山にある木の価値を引き出すのは、人の力であることに、末宗は気づいている。

今秋には京橋に新拠点「イノベーションセンター」開設
イトーキは今年4月、新しいプロジェクトをスタートさせた。山梨県の早川町、丹波山村、道志村とともに「やまなし水源地ブランド推進協議会」を設立し、地域材家具の生産・販売を通じて山村振興にも関与していくことを表明したのだ。末宗は、「今後、こうした取り組みが増えていくかもしれない」という。
また、同社はこの秋に、東京都中央区の京橋に「イノベーションセンター」を開設する。従来型のショールームではなく、交流型ビジネス拠点として整備するもので、内装には地域材を活用することが検討されている。
こうした動きは、同社が単なるオフィス家具メーカーに止まらず、課題解決型のソリューションビジネスに踏み出していることを示している。
事実、同社には今、全国の自治体からさまざまな相談が寄せられている。その窓口となっている末宗は、「地域や産地の違いはブランドになる」と指摘し、こう続けた。「鹿児島のスギ、愛媛のヒノキ、徳島のスギ、長野のカラマツ、吉野のスギ、秋田のスギ……それぞれ個性があり、製品になっても訴求力がある。そのようにデザインすればいい」。
「家具で使う木材の量は、たかがしれている」と末宗は苦笑しつつも、「スギやヒノキはこういうものとみんなに知ってもらうことが大事」と強調する。
「どこの産地も、今まで住宅用材のことばかり考えてやってきたが、もっと違った切り口があっていい」――その切り口を発見した末宗の表情からは、確かな自信が感じられる。

(2012年7月10日取材)
(トップ画像=エコニファの製品群の1つ「fk-フレーム」)
『林政ニュース』編集部
1994年の創刊から31年目に突入! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。