地元森林組合と二人三脚で混交林林業を実践する村山木材【突撃レポート】

北海道 森林経営・管理

旭川空港から北へ3時間ほど車を走らせると、毛ガニやホタテなど海産物の名産地として知られる北海道枝幸町に着く。同町の森林面積の13分の1を管理する村山木材(株)(北海道枝幸町、村山良子社長)は、地元森林組合と二人三脚で針広混交林を育成する林業を行い、ロングスパンの経営を目指している。

身軽なスモールビジネスで約3,200haの所有林を経営管理

村山木材が所有・管理する森林面積は約3,200ha、このうち約800haは保安林に指定されている。樹種構成は、トドマツやアカエゾマツなどの人工林が約2割、残り約8割が天然林となっている。

1990年代前半までは伐採班を保有し、製材所も経営していたが、経営悪化などに伴い廃止した。現在は、家族2名で経営管理計画の策定と原木の販売で生計を立てている。年商は2,500~3,000万円。木材価格が下落したときは出材を見合わせるなど、経営スタイルは柔軟だ。

機械・設備・従業員ナシの身軽なスモールビジネスを展開する同社の大きな特徴は、生物多様性に配慮した針広混交林の林業を実践していること。村山恵一郎・専務取締役(48歳)は、「本州の人工林林業の“常識”は通じない」と言う。そして、「当社は地元の南宗谷森林組合とともに、自然の力を活かした森林づくりを目指している」と明快に語った。

村山恵一郎・村山木材専務取締役(左)と西澤真也・南宗谷森林組合業務課長

平均年齢32歳の南宗谷森林組合が“新たな森林づくり”に協力

村山木材の“相棒”である南宗谷森林組合(枝幸町、村上守義組合長)の管理面積は約3万3,000ha(人工林4割、天然林6割)。同組合自ら1,746haの森林と240haの苗畑を所有し、高性能林業機械もハーベスタやグラップルなどを保有している。

同組合の特色は、若手人材が揃っていることだ。13名いる職員の平均年齢は32歳。組合事務所を構える枝幸町は周辺地域では比較的大きい町で、生活インフラや働き口が整っており、若手人材が定着しやすい伸びやかな環境が広がっている。このためか同社が針広混交林の林業に着手したときも、新しい挑戦を抵抗なく受け止めた。

同組合の西澤真也・業務課長は、「当初は失敗もあったが、今は村山木材さんが意図する施業が確実にできている」と阿吽(あうん)の呼吸をみせる。

天然更新、非皆伐、手入れは収穫時のみ、5年前に手応え掴む

村山専務は、旧・三井物産林業(現・物林(株))に入社して広葉樹の製材や乾燥などの業務に3年従事した。この間に、「家業が針葉樹一辺倒の経営では太刀打ちできない」と見極めたという。

そして、1999年に村山木材に入り、15年ほど前から針広混交林の林業に取り組み始めた。最初の10年間は失敗が続いたが、5年前に約23haの広葉樹林を整備した際、天然のエゾマツやトドマツが芽吹いているのを見て、「これなら自然の力を活かした針広混交林を育成できると確信した」と振り返る。

同社の針広混合林林業では、①天然更新、②非皆伐、③手入れは収穫時のみ――の3原則を貫いている。収穫作業は、本数比の3割間伐を基準に実施している。

ハーベスタで伐開した跡地、道際の立木をあわせて伐採している

伐採作業は、基本的に不規則な帯状間伐で行っている。北海道特有の緩い傾斜地をハーベスタで伐り開きながら進み、林道周辺の林木を伐出している。

生物多様性に配慮した「クマゲラの森」、経済と環境の両立へ

村山木材の所有林には、大学演習林のように様々な林分が存在する。村山専務は、「有用広葉樹林だけの経済的に豊かな森林が良い山ではない。様々な動植物や昆虫、亜高木・低木・草本などが生息する生物多様性に配慮した森林こそ良い山」と説明する。それを体現したのが「クマゲラの森」だ。クマゲラが生息しやすいように倒木や枯れ木などを残し、子育てする期間は、機械や人が極力入らないようにしている。

クマゲラの森

一方で、積極的に人の手を加える林分も存在する。トドマツの三段複層林や、広葉樹を残して針葉樹を植栽した針広混交林などだ。ただし、人手をかける林分でも、生物多様性に配慮し、自然の力を活かす原則は一貫している。

トドマツの三段複層林(奥から69年生、19年生、7年生)

「これから人口減少が進むと人材確保が益々難しくなる。そうなれば多くの人手を必要とする林業は成立しなくなる可能性が高い」と話す村山専務は、「災害や病虫害のリスクなども考慮すれば、この土地では針広混交林の林業が最も経済性が高い」と語調を強めた。「これが正解だとわかれば、それしかやらない。だが、森林づくりは奥が深く、どれが正解かわからない。だから様々な施業を行っているし、今後も継続していく」とロングスパン経営を貫いていく方針を改めて口にした。

広葉樹を残してアカエゾマツを植栽した林分

(2021年9月30日取材)

(トップ画像=5年前に整備した針広混交林、製材所の経営中にほとんどの針葉樹は伐採された)

『林政ニュース』編集部

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