平田元会長ら幹部を逮捕、粉飾決算で揺れるすてきナイスグループ

粉飾決算事件で揺れるすてきナイスグループ(株)(神奈川県横浜市、杉田理之社長)が抜本的な経営改革を迫られる事態に陥っている。

横浜地方検察庁と証券取引等監視委員会は、粉飾決算の疑いで5月16日に同社を強制捜査した。これを受けて同社が設置した第三者委員会(日野正晴委員長)は、7月24日に調査報告書を公表し、元会長兼CEOの平田恒一郎容疑者(71歳)らが関与して2015年3月期決算において売上高約32億円を架空計上したなどと結論。翌25日には、横浜地検特別刑事部が平田容疑者と元社長の日暮清(67歳)、元取締役の大野弘(63歳)の両容疑者を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。同社は、8月1日に過年度の有価証券報告書や決算短信を訂正し、焦点となっている2015年3月期の純利益を4億8,800万円の黒字から4億5,200万円の赤字に改めるなどの下方修正を行った。

木材流通業界を代表する企業の経営トップが逮捕されたことなどの衝撃は大きく、事態が収束する見通しはまだついていない。

「ワイシャツは白」など完全支配、迫られる創業家との決別

すてきナイスの粉飾決算問題にメスを入れた第三者委員会(3名の弁護士と公認会計士で構成)の報告書は、創業者・平田周次氏の子息である平田恒一郎容疑者の独裁的ともいえる影響力が事件の根本にあるとの見方を示した。180頁に及ぶ報告書の28~29頁には、次のような記述がある。

「平田恒一郎氏は、ナイスグループ各社の部長以上の人事を掌握していた。…(中略)…例えば、新築マンションの完成後、未販売物件(完成在庫)があった場合、完売になるまで会議等において毎回、住宅部門の役員に起立の上謝罪させたり、『清く、正しく、まじめなナイス』という行動規範を示し、自ら定めた『ワイシャツは白』、『役員は喫煙禁止』、『ゴルフ禁止』等の決まりに違反した役員の降格を命じるなどしていた」

すてきナイスは、木材市売業を起源とするが、現在では木材・建築関連資材の取り扱いにとどまらず、住宅・マンションの販売や情報サービス、コンサルティング、ケーブルテレビの運営など多岐にわたるビジネスを展開している。90以上のグループ会社(関連会社を含む)に加えてグループ外の実質支配会社もあり、全体を掌握できるのは平田容疑者だけという構図になっていた。しかも、平田容疑者は「自らが取締役を務めていた日栄ファイナンス株式会社が会社整理に追い込まれた経験もあってか赤字を非常に嫌っていた…(中略)…業績の悪い期の期末においては、しばしば有休不動産の処分等の『決算対策』が行われていた」(報告書109頁)。こうした“体質”がペーパーカンパニーを使った粉飾決算の引き金になったとみられる。

第三者委員会は、再発防止策として、「ナイスグループの創業家又はこれと密接な関係を有する者は、ナイスグループの経営から退いてもらう」(同172頁)と提言した。“平田家”の圧倒的な存在感で一部上場企業にまで成長したすてきナイスが、一転して創業家と決別するという大きな変革期を迎えている。

(2019年7月24・25日、8月1日取材)

『林政ニュース』編集部

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