海外から40~50樹種の木材を直接調達、顧客にストーリーを伝える
マルホンは、国内外から多種多様な木材を調達している。とくに海外に広げた独自のネットワークが同社の強みだ。現在は約25社から40~50の樹種を購入し、常時400点以上の製品を揃えている。年間の販売量は、約3,000m3に達する。
木材を調達する際の原則は、FSCをはじめとした森林認証材を優先し、認証材ではない場合は伐採証明などの合法性確認に必要な書類を揃えること。商社は介さず、現地の製材所などと直接取引している。その理由について、社長の加藤拓(48歳)は、「利益の確保はもちろんのことだが、関係者が増えるほどトレーサビリティの確保が難しくなるから」と話す。
同社は2016年9月に、「環境にやさしいデューデリジェンス(DD)プログラム」を策定した。続いて同年11月には、カタログに掲載している全商品について、「持続可能な木材資源保持のための取り組み」を実施すると宣言。この企業ポリシーを実践するため、木材の調達を担うスタッフのみならず販売を担うスタッフにも、樹種ごとの担当者を配置して、二人三脚で仕入れや営業をする体制をとっている。各樹種の担当者は、販売の際には「どこにどのように生えていた木なのか」というストーリーを顧客に伝え、根拠となる証明書類なども示して説明責任を果たす。これが同社の製品への信頼性を高めている。
地元業者とともに独自路線確立、ファンドが事業継承を仲介
マルホンは、地元・天竜材の建材を扱う材木問屋として1934年に創業した。以降、約50年間は国産材の製品を販売していたが、加藤の前社長である伊藤則良が海外の現地を飛び回り、1980年代から広葉樹の板材を仕入れるようになった。1990年代に入るとまわりの材木問屋はプレカット事業などへ多角化したが、同社は独自路線で行くことを決め、フローリングや内装材の流通業者へと業容を変えてきた。
時を同じくして、浜松市周辺の楽器メーカーが工場を海外に移し、地元の木材加工業者や塗装業者の仕事が減った。同社はそこに着目し、高い技術力を持つ地元業者に加工や塗装を委託する連携体制を構築した。これによって、顧客からの細かな注文にも対応できるようになった。

事業を軌道に乗せた同社にとって、残る課題は後継者問題だった。伊藤の子息は事業継承をしない意向を示したため、役職員、農林中央金庫、三井物産企業投資(株)が株主を構成するアント・キャピタル・パートナーズ(株)が運営する中小企業を対象にした投資ファンドが同社の株式を取得。次代を託すリーダーとして、加藤に白羽の矢が立ち、2015年6月に同社社長に就任した。
加藤は、慶應義塾大学を卒業後、アクセンチュア(株)などを経て、アント・キャピタル・パートナーズで勤務していた。なお、加藤の叔父は、日本で初めてFSC認証を取得した速水林業の速水亨代表である。
リアル&ネットで魅力発信、国内資源をワイスとともに活かす
マルホンは、ムク材を使った各種製品の魅力を様々な手法で発信している。ショールームは、東京都新宿区、静岡県浜松市、大阪府大阪市、福岡県福岡市の4か所にあり、フローリングの展示フロアやサンプルボードでは素足で踏んで木の肌触りや温もりを体感できる。
また、1分の1スケールの商品写真と使用シーンを掲載した『木材見本帖』と『木材読本』を関係先に配布しているほか、総合WEBサイト「木材ドットコム」も運営している。


一朝一夕には成し得ない事業領域をつくり上げてきた同社にとって、現在の最大懸案は海外からの広葉樹材の調達だ。「以前はウォールナットの幅広で長尺な板材も購入できたが、今は夢のような話になっている」と加藤は率直に言う。海外調達が難しいとなれば、当然、国内の森林資源に目が向く。だが、「トレーサビリティが確保された高品質な木材は少ない」のが現状だ。昨年取り扱ったFSC認証のある国産広葉樹材は、「それぞれの樹種でわずか約100m2分だった」という。
これから国内でフェアウッドの調達量を増やしていくためには、「“目利き”が肝になる」と加藤は口にし、「認証はとったもののチップ用に流れている木材もある。これらも有効活用して量を確保していくことが必要だ」と強調した。この課題を乗り越えるためには、ワイス・ワイスが築いてきた調達力が欠かせない。
同社の年間売上高は約25億円で、ワイス・ワイスが約4億円を占める。同社の顧客は個人住宅の施主がメインだが、「これから非住宅分野に参入していきたい」と戦略を練っており、空間デザインを得意とするワイス・ワイスとの協業はベストマッチングといえる。加藤は、「シナジー(相乗効果)を生み出すときが来ている」と意欲をみせている。
(2021年10月10日取材)
(トップ画像=浜松市にあるマルホンの本社倉庫、すべての製品に仕入先の工場や製材所などがラベリングされている)
『林政ニュース』編集部
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