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新設住宅着工の増加ペースが継続し、合板に強い引き合い
日合商は、1955(昭和30)年8月に全国各地の約200に上る合板卸売業者が結集し、「日本ベニヤ板商業連合会」として発足した。当時は戦後復興需要が本格化し、建築資材としての合板に対するニーズが急増していた。同連合会は、合板メーカーからの製品調達や価格交渉の窓口役となり、安定供給のパイプづくりに尽力した。この段階では民間の任意団体だったが、1977(昭和52)年10月に、農林水産省及び林野庁の指導を踏まえて、「日本合板商業組合」として新発足した。以降、合板建材流通業界では唯一の国による認可団体として活動している。現在の組合員数は968社。北海道から九州・沖縄まで各地に支部を置き、主に表のような事業を行っている。

遠藤理事長は、ジューテックホールディングスの本社ビルにいる足立理事長を訪ね、まず合板流通を巡る状況について問いかけた。
秋需が真っ盛りの中で、合板の需給が極めてタイトになっている。モノ不足と価格高騰が顕著になっており、「合板危機」や「合板ショック」という声も聞こえるほどだ。ここまでの需給ひっ迫をもたらしている要因についてどうみているか。

基本的に建築用材としての合板の需要が順調に増えていることがある。今年(2021年)1月~8月の新設住宅着工戸数は56万3,000戸で前年比4.7%増となっている。足元の受注も堅調であり、少なくとも年内は合板への引き合いは強いだろう。
コロナ禍を経た生活・意識の変化が新たな需要を生んでいる
なぜ住宅需要は、ここまで好調なのか。
住宅ローン減税や低金利などの政策的支援策が効いている面がある。また、コロナ禍を経て消費者の住まいに対する関心が高まり、住み替えやリフォームなどの需要が増えてきている。
とくに建売住宅がよく売れているようだ。
東京都区内ではマンションの価格がものすごく上がっている。港区、中央区、千代田区などでは坪単価が600万円を超える物件も珍しくない。そうなると郊外の建売住宅に目を向ける消費者が増えてくる。コロナ対策でテレワークが普及しており、都心の狭小な住宅で過ごすよりは、少々遠くても広いスペースの住宅の中に書斎を確保しようというニーズが出てきている。
東京を離れてリゾート地などの物件を求める消費者も多いようだ。
東京駅から1~2時間程度の自治体の中には新幹線代を肩代わりして定住を促しているところもある。企業も本社をリゾート地などに移して、働き方改革に取り組むケースが出てきた。
人口減という構造的な問題はあるものの、当面は堅調な住宅・建築需要が続くのではないか。
南洋材合板は“3つの不足”で供給難、中国産合板は品質に問題
需要が好調だと合板の供給不足が益々深刻度を増してくる。
合板には、南洋材を中心とした輸入合板と、国産の針葉樹合板の2つがある。
南洋材合板は、東南アジアのマレーシアやインドネシアを中心に生産されている。これらの海外産地は現在雨期に入っているが、その前から悪い天候が続いて原木(丸太)の出材量が少なかった。根本的に合板用の原木が不足している。
これに国際的に物流を滞らせているコンテナ不足の問題が重なって、合板の輸入を難しくしている。日本向けコンテナ運賃は高止まりしており、採算性をとることが非常に難しくなっている。

コロナ禍の影響も出ているのか。
マレーシアやインドネシアもロックダウンや移動制限の措置をとった。このため労働力が不足し、工場の稼働率が落ちている。一部の工場は、閉鎖せざるを得ないところにまで追い込まれている。
このように、原木、コンテナ、労働力の3つが不足しており、生産量を上げたくても上げられないのが実情だ。この状況は簡単に改善できるものではなく、輸入合板の不足は今後も続くだろう。
最近は中国からも合板が輸入されるようになっているが、どのように評価しているか。
中国では主としてポプラやユーカリなどの早生樹を使って合板をつくっており、雑多なものが日本に入ってきている。総じて品質面では南洋材合板より劣っている。
中国からは間柱などの建築用材も国産品の7割程度の低価格で入ってきているが、カビが生えていたり品質には問題があるようだ。
中国産の合板にも剥離があったり品質問題がつきまとっているので、例えば梱包用に使うなど用途を見極めて利用していくことが必要だ。中には、一定の品質を確保した合板を供給できるメーカーもあり、日合商の各企業は独自に基準をつくって、扱うか、扱わないかを決めている。我々には供給責任があり、品質に対するクレームが一番怖い。その点、日本合板工業組合連合会の加盟メーカーが供給する合板は品質が保証されているので安心して取り扱うことができる。
月末在庫量が0.3か月分にまで減少、かつてない低水準
輸入合板に頼れないとなれば、国産材を使った合板を増産して供給不足をカバーするしかない。その前提として、現在の不足量を確認しておきたい。
1つの指標として、国産針葉樹合板(普通合板)の月末在庫量がある。今年の初めから在庫量が減っていたが、とくに4月から8月まで連続で減少し、9月は約7万m3、0.3か月分しか在庫がなくなってしまった。これは異常な少なさといえる。
どのくらいの在庫量が適正なのか。
かつては、20万m3、2か月分の月末在庫量が基本となり、その上下で変動していた。最低でも10万m3はないと需給はひっ迫する。それが7万m3しかないとなると、マーケットニーズに応えられなくなる。
国内の合板工場はフル稼働を続けているのだが。
そのことはよく理解している。この機に次の時代を見据えて、国産材合板の供給体制を再構築すべきだろう。今は「合板危機」だが、構造改革のチャンスでもある。(後編につづく)
(2021年10月4日取材)
(トップ画像=中国・徐州における単板製造の様子、5年生のポプラを使っている)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。