長野県の塩尻市と木曽町にある廃校を再利用して合板の生産を始める全国でも例のないプロジェクトが動き出している。事業主体となっているのは昨年(2024年)9月に発足した(株)ツミカサネ(長野県木曽町、青野裕介・代表取締役)で、地元の自治体や大手ゼネコンの(株)竹中工務店(大阪府大阪市)などが支援する体制をとっている。
ツミカサネが2026年秋の本格稼働を目指す
生産を計画しているのは内装用の化粧合板で、地場産のカラマツ、ヒノキ、スギなどを利用する。
生産拠点となるのは、塩尻市奈良井にある旧楢川中学校と木曽町新開の旧上田小学校。旧楢川中の敷地面積は3万1,000m2で、1988年に竣工した地上3階建て鉄筋コンクリート造の建物(延床面積約4,800m2)があるが、義務教育学校への移行に伴い2022年4月から空き校舎になっている。また、旧上田小は、学校統合に伴い2012年に閉校し、木造2階建て(同約2,400m2)の空き校舎が残っている。


計画では、旧楢川中にロータリーレースなどを導入して単板をつくり、旧上田小にプレス機などを設置して製品化する。6月2日に旧上田小で起工式を行い、施設整備などの工事を本格化させた。来年(2026年)3月末には一連の生産ラインを整え、試験操業を重ねた上で、秋頃から本格稼働させる予定。ツミカサネの青野社長は、「年間の原木(丸太)消費量は1,000~3,000m3くらいでスタートし、段階的に増やしていく。量産型の構造用合板とは全く別のスケールで付加価値の高い化粧合板をつくり、地域の森林を循環利用していきたい」と話している。

青野社長「量産型とは全く別のスケールで循環利用を目指す」
ツミカサネを立ち上げた青野社長は、木工・家具製作や空間デザインなどを手がける(株)Tree To Green(東京都渋谷区)の社長でもあり、木曽おもちゃ美術館(長野県木曽町)に隣接する木工振興拠点「コウサクバ」の指定管理者も担っている。

新たな取り組みとなる化粧合板の生産については、「竹中工務店が提唱している『森林グランドサイクルⓇ』の一端を担うかたちにもなる」と位置づけており、「木曽の木材をもっと多くの方々の手に触れるようにしたい」と話している。
なお、ツミカサネという社名には、「細い木でも有効活用して単板を1枚1枚重ね合わせ強度や品質を高める」という意味が込められている。
(2025年6月2日取材)
(トップ画像=旧上田小学校の木造校舎)
『林政ニュース』編集部
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