独自の木材規格とネットワークで需要を掴む京都府木連【突撃レポート】

独自の木材規格とネットワークで需要を掴む京都府木連【突撃レポート】

「2050年カーボンニュートラル」が国家目標となり、地域材などを使って脱炭素社会を形成していくことが喫緊の課題になっている。1997年末に「京都議定書」が採択された地球温暖化対策発祥の地・京都では、京都府木材組合連合会(京都市、辻井重会長)が中核となり、中小の木材業者らが連携して“木のまち”づくりを進めている。最新状況をお伝えする。

木材供給の大半を府外に頼る中で府産材の先進建築物が増加

京都府には約12万6,000haの人工林があり、年間の木材需要量は約43万m3(原木ベース、2019年度時点)に達する。しかし、府内の木材生産量は約15万m3(同)でしかなく、中身もB材やC材が主体でA材のウエイトは低い。この現状について、京都府木材組合連合会の愛甲政利・専務理事は、「木材供給の大半を府外に頼ってしまっている」と課題を口にする。

だがその中でも、京都府産材を使って先進的な木造建築物を建てるプロジェクトが徐々に増えてきている。代表例の1つが、昨年(2020年)竣工した京都府立清新高等学校(京丹後市)の校舎。木造平屋建てで、延床面積495.4m2。京都府産材を140m3使用した。建設コスト、温室効果ガス排出量、地域経済波及効果の3指標で比較した結果、RC(鉄筋コンクリート)造及びS(鉄骨)造よりも木造の方が優れていると評価された建物だ。

宇治田原町保健センター・地域子育て支援センターの内観

同じく昨年完成した宇治田原町保健センター・地域子育て支援センターもシンボリックな建物になっている。木造平屋建てで、延床面積は589.86m2。宇治田原町産の木材を使うことにこだわり、製材やプレカット加工などもすべて地元で行った。木材使用量は109m3となっている。

中小の業者が結集したKTS+(プラス)京都ネットの“両輪”が機能

京都府内には、いわゆる大規模な製材工場がない。54の中小規模製材工場等が府内の木材供給を担いつつ、地元の企業として操業している。この状況で、先進的な木造建築プロジェクトに対応できているのはなぜか。

駆動力となっているのが「京都木材規格(Kyoto Timber Standard、「KTS」と略)と「京都木材加工ネット」(「京都ネット」と略)だ。

「京都木材規格(KTS)」の認証ラベル

KTSは、日本農林規格(JAS)に準拠した京都独自の木材規格として2012年に創設された。府が実施している木材認証制度(後述)で認証を取得した木材製品を対象に、①含水率、②寸法、③材面の品質、④曲げ性能について独自の基準を設けて測定・表示し、品質・性能に関するお墨付きを与えている。

KTSができた当時、府内にはJAS工場は下地材等2社しかなく、木造建築用の木材供給は府外のJAS認定業者に頼らざるを得なかった。JASを取得するには費用も手間もかかり、中小の工場は簡単には踏み出せない。そこで、JASへの“助走”としてつくられたのがKTSであり、身の丈にあった取り組みを進める道筋ができた。

このKTSの受け皿となっているのが、26社で構成している京都ネットだ。京都ネットには製材企業だけではなく、木材問屋なども参画している。流通を担う木材問屋が窓口となって新築案件などを受注し、京都ネットのメンバーが得意分野を出し合って仕事を進めるという協業体制ができている。


KTSの普及によって品質・性能に対する意識が高まり、府内の6社がJASを取得して、構造材、造作材、下地材などはJAS認証製品を供給できるようになった。一時はKTS不要論が出たこともあったが、中大規模木造建築などの新規需要に対応していくためには、KTS+京都ネットの“両輪”が不可欠との認識が関係者間で共有され、引き続きJASと共存していく方針がとられている。

ウッドマイレージで環境効果を数値化、“府産府消”を推進

KTSのベースとなっている京都府産木材認証制度は、2004年に創設されて府木連が事務局をつとめている。同制度には、生産地を証明する「京都の木証明」と、木材輸送時の二酸化炭素(CO2)排出量を示す「ウッドマイレージCO2京都の木認証」がある。外国から京都まで木材を持ってくるとウッドマイレージは大きくなる。反対に地元の木材を使えば、ウッドマイレージは小さくなる。は、直近3年間のウッドマイレージ証明発行実績をもとに、府産材を使用することで、CO2をどれだけ削減できたかを試算したものだ。府産材を使う環境効果が具体的に“見える化”されている。

プレカット加工が施された積み木
愛甲政利・京都府木材組合連合会専務理事

府木連では、昨年度(2020年度)から府内約500の保育園と連携し、代表5園の協力により家具・遊具に関する意見交換や試作、モニタリングを実施して「京都の木でつくる家具」の冊子(55頁、205商品を掲載)にまとめた(「顔の見える木材での快適空間づくり事業」を活用)。園児や先生からのフィードバックを受けて製品の完成度を高めて、今年度(2021年度)から本格販売する予定だ。

府木連の愛甲専務は、様々な取り組みが同時並行的に進み始めたことを踏まえて、「地球温暖化対策への貢献やSDGsなどへの府民の関心がかつてなく高まってきている。新たなニーズに『府産府消』で応えていきたい」と意欲をみせている。

(トップ画像=京都府立清新高等学校の外観)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(2208文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。