政府は6月1日の閣議で、2020(令和2)年度の『森林・林業白書』を決定し、公表した。例年と同じくトピックスと全6章からなり、第1章(特集章)では「森林を活かす持続的な林業経営」をテーマに据えた。
特集章の中で目を引くのは、今後の林業経営の可能性を示したこと。生産性の向上や造林コストの削減などに取り組んだ場合の採算性を初めて試算した。
その結果はトップ画像のとおりで、エリートツリーの低密度植栽(1,500本/ha)や自動化機械の導入などで「新しい林業」に転換すれば、ha当たり113万円の収入が得られるとした。このケースでは、スギの伐期を30年に短縮し、保育間伐は行わない。必要な人員は、作業員2名、事務員1名で、作業員の賃金は2万4,000円/人日、年平均給与は492万円になるとした。
また、「新しい林業」の前段階にあたる伐期50年の「近い将来」の林業でも、ha当たり71万円の黒字化が可能であり、作業員の年平均給与は378万円になると試算した。 このほかにも、林業経営の収益性を高める参考事例を紹介。宮崎県森林組合連合会は、県内の森林組合や素材生産事業者等と協議会をつくり、大型製材工場に原木を安定供給することで、山元立木価格を高めている。また、長伐期施業や優良材生産を追求する場合は「顔の見える家づくり」を行っている工務店や大工と連携することが有効であり、小規模経営でも農業やアウトドア事業などを兼業することで収入源を多角化できるなど、林業経営には様々な“生きる道”があることを提示している。
『林政ニュース』編集部
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