(前編)林業再生に向けて木質発電を進める新電力開発【遠藤日雄のルポ&対論】

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(前編)林業再生に向けて木質発電を進める新電力開発【遠藤日雄のルポ&対論】

全国各地で木質バイオマス発電所が相次いで稼働し始め、日本林業の様相が大きく変わってきた。従来は使い道のなかった未利用木材に発電用燃料という新たな“出口(需要先)”ができたことは大きい。その一方で、燃料材の調達を巡って既存の木材利用・流通と競合が起きている現実もある。
木質バイオマス発電所は、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)による政策的な支援や、脱炭素化などの追い風を受けて今後も増えていくとみられる。それだけに、各地の林業・木材産業が木質バイオマス発電所といかに“共生”していくかが問われている。
こうした中で、遠藤日雄・NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長のもとに、ある情報がもたらされた。それは、東京都港区に本社を置く新電力開発(株)(坂口愼一郎・代表取締役)が山林の取得を行いながら独自の木質バイオマス発電事業を展開しているというものだ。遠藤理事長は早速、同社の坂口愼一郎社長をはじめとした幹部に呼びかけて、オンラインでの「対論」を行った。

発電所の企画、運営、メンテナンスに加え山林の再生事業も

新電力開発のホームページには、同社が進めている3つの主要事業が掲げられている。1つは再生可能エネルギー発電所、すなわち木質バイオマス発電所の企画と建設準備、2つめは同発電所の運営とメンテナンス、そして3つめは山林の循環型再生事業だ。 遠藤理事長は、まず同社が手がける事業の全体像を掴もうと問いかけた。

遠藤理事長

木質バイオマス発電所を運営する会社が山林の再生事業まで前面に打ち出すのは珍しい。一般的な事業モデルでは、まず発電所の規模や収益性などを検討し、それに基づいて燃料材の効率的な集荷体制を構築しようとすることが多い。山林の再生事業とは、具体的にどのようなことを行っているのか。

坂口社長

弊社で山林を買い取り、関連会社の(株)レック...

遠藤日雄(えんどう・くさお)

NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。

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