半世紀前に国有林内で使われた「2.4.5-T系除草剤」の処理問題が未だにくすぶり続けている。同除草剤には、製造過程でごく微量のダイオキシン類が含まれていた。ダイオキシン類は、ベトナム戦争時に米軍が使用した枯れ葉剤にも含まれており、がんや先天性奇形などの被害を引き起こしたとされる。これまでも同除草剤の処理問題は国会等で議論され、対策も講じられてきた。だが、一部のメディアが問題ありと報じ、再び注目が集まっている。
国有林では、1968~1970年頃に、当時は農薬に登録されていた同除草剤を使用していたが、1971年4月に林野庁長官通知を出して使用を中止。未使用分については土壌・セメント・水と混ぜて1m以上の深さに埋め、1か所の埋設量は原則300㎏以内、埋設場所は水源から離れた峰筋近くを選ぶなどの手法をとった。
その後、1984年にこの埋設手法とは異なるケースが判明したため、学識者検討会が調査を行って、①同除草剤及びダイオキシン類は土壌に吸着されており周囲への移動は認められない、②地域住民生活に及ぼす影響はないと結論、埋設地は立ち入り禁止とし、土壌をかく乱する行為等も禁止する措置をとった。
現在、この措置に沿って15道県にある46か所の埋設地を32の森林管理署等が管理しており、年2回以上の定期点検や大雨・地震時の臨時点検などを行っている。これまでに埋設物の流出が確認されたことはない。
だが、近年の異常気象で埋設地を巻き込んだ災害発生のリスクが高まっている。ごく微量とはいえ毒性の強いダイオキシン類が国有林内に存在していることへの懸念や不安は依然として解消されていない。このため林野庁は今年度(2022年度)から、埋設物を安全に撤去(掘削処理)するモデル事業を実施し、埋設物中のダイオキシン類の濃度なども調査することにしている。
(2022年5月10日取材)
『林政ニュース』編集部
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