住友林業とNTTComが「森かち」開始 J-クレジットの売買を支援、有利販売など競う

住友林業とNTTComが「森かち」開始 J-クレジットの売買を支援、有利販売など競う

住友林業(株)とNTTコミュニケーションズ(株)(以下「NTTCom」と略)は8月27日に、J-クレジットの創出や売買などを支援する「森林価値創造プラットフォーム」(通称「森かち」)を立ち上げた。同様のサービスは、全国森林組合連合会と農林中央金庫が行っている*1ほか、東京証券取引所や大手金融機関などは独自の取引市場を開設しており*2、J-クレジットの有利販売などを巡る競争が激しくなってきた。

脱炭素化に取り組む企業などが増え、森林由来のJ-クレジットに対する需要が高まっている。その一方で、その創出や審査、売買に関する手続きは煩雑でわかりにくく、情報も不足している。「森かち」は、こうした現状を打開するために、住友林業とNTTComが3年余をかけて開発した。

「森かち」の全体概要はトップ画像のようになっており、クレジットの創出者に対してはデータ整備や申請書類作成支援機能を提供し、購入者にはクレジットを創出した森林の状況や価格などがわかる販売ページを用意してマッチングを促進する。関連する資料やデータはすべてデジタル化し、GIS(地理情報システム)等を活用して対象森林の位置情報と紐づけることによって審査業務の負担軽減などを図る。

「森かち」の基本的なサービスは、会員登録をすれば利用でき、コンサルティングを受けたり、クレジットの売買が成立したときには一定の手数料が取られる。

生物多様性保全機能なども含め「27年までに7億円を売り上げる」

8月27日に開かれた「森かち」の記者説明会では、住友林業とNTTComの担当者がデモンストレーションなどを行い、使い勝手の良さをアピールした。9月3日時点では、クレジットを創出した4組織、5プロジェクトが登録されており、さらに登録件数を増やしながら生成AIによる支援機能なども取り入れることで、競合するサービス等との差別化を図っていく方針だ。

東京都千代田区のNTTCom本社で「森かち」の記者説明会を行った

今後に向けて、住友林業の岡田広行・脱炭素事業部グループマネジャーは、「CO2(二酸化炭素)の吸収だけでなく、森林の生物多様性保全機能なども定量評価・取引できるプラットフォームを目指したい」と抱負を述べ、「2027年までに7億円の売り上げを計画している」と口にした。森林の有する多様な機能をいかに価値化し、山元還元を増やしていくか──この点を競い合う構図になってきた。

(2024年8月27日取材)

(トップ画像=「森かち」の全体概要)

『林政ニュース』編集部

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