いち早く「コンビマシン」を導入、林業機械が45台に増える
佐藤木材工業は、2009年にドイツ・ヴェルテ(WELTE)社製の「コンビマシン」を輸入し、全国の林業関係者から大きな注目を集めた。「コンビマシン」は、グラップル、ウインチ、スキッダ、フォワーダの4つの機能を併せ持つ多工程処理機械で、今でも最先端のマシンといえる。
林業機械化に関する同社の先駆的な取り組みは「コンビマシン」にとどまらない。2012年には、フィンランド・ポンセ(PONSSE)社製のホイール式ハーベスタとフォワーダを導入するなど、継続的に海外製の高性能林業機械を輸入してきた。
現在は、ポンセ社製の3台を中心として、計45台の林業機械を保有する。
同社の佐藤健右社長は、「海外製の機械は林業専用に開発されているので使いやすい」と評価しており、「大径化してきている立木を安全に効率よく伐出するためには大型の機械が欠かせない」と今後も機械化への投資を続ける方針を打ち出している。
年間原木取扱量10万m3、主力はトドマツ桟木と発電用チップ
1932年に下駄の製造工場として創業した佐藤木材工業は、現在約100名の社員を擁し、年間売上高は約27億円に上る。
高性能林業機械を駆使した伐採・搬出と植林をはじめ、製材や集成材、チップなどの加工・販売、木材乾燥、割箸販売まで、手がけている事業は幅広い。
伐採・搬出事業については、国有林と道有林及び約900haの社有林を主なフィールドにして行っている。25名の社員が4つの造材班(伐採・搬出班)と1つの造林班を編成し、積雪で植林などができない冬季は造林班が造材班に加わることで、通年で作業を行えるようにしている。自社で年間約4万m3の原木を伐出するだけでなく、周辺からも原木を集荷することで年間の取扱量は約10万m3に達する。

この集荷力をベースにして、同社の主力製品となっているのがトドマツの桟木だ。桟木は、屋根の上に瓦を取り付ける際や、コンクリートの型枠に使用される。サイズは、厚さが30mm、幅が48mm、長さは本州仕様の4mと道内仕様の3m65cmがある。
もともと桟木にはロシアから輸入されるアカマツが使用されていた。しかし、ロシアが原木輸出に規制をかけたことで、トドマツへの樹種転換が進んできた。
この間に桟木の生産から撤退する同業他社も少なくなかったが、同社はトドマツ桟木を安定的に生産して首都圏に出荷し、確実に需要を掴んできた。
もう1つ、同社の経営を下支えしているのが発電用チップの生産だ。地元・紋別市では、住友林業(株)が中心となって運営する出力5万kWの紋別バイオマス発電所が稼働しており、約6万5,000世帯分の電力をつくり出している。社会インフラである電力を安定供給するために、燃料となる同社のチップが欠かせない存在となっている。
大型機械の運搬が課題、土場を拡張、認証材で新販路開拓へ
佐藤木材工業が拠点を置く紋別市は沿岸部に位置するため、内陸部に立地する企業と比べて、原木の集荷範囲を広げる必要がある。今は半径約150kmに及ぶ広範囲から原木を集めているが、ネックが2つある。
1つは輸送費の問題だ。トラックの運転手の不足、燃料費の高騰などコストアップ要因は枚挙にいとまがない。
もう1つが林業機械の運搬だ。立木も年々大きくなり、より大径材を伐出できる大型林業機械が必要になってきている。これらのネックを解消するために有望視されているのが自走できるホイール(車輪)式林業機械の活用だ。佐藤社長は「今の制度では、農業機械は小型特殊自動車の認可を受け公道を走れるが、林業機械は基本的に認可されないため走れない。公道を走行できれば輸送コストなどが下がるのだが」と課題を口にした。なお、同社では来年度(2023年度)内に3台の大型林業機械の導入を検討している。
佐藤社長は、昨年(2021年)11月26日に政府の規制改革推進会議が開いた農林水産ワーキンググループに依頼を受け出席し、この問題への対応を求めた。関係機関と意見交換を重ねながら実現を求めていくことにしている。

同社は、今後の伐出量増加に備えて、工場付近にある土場を8haから12haまで拡張する工事に着手している。原木のストック能力を高めて、トドマツ桟木などに続く主力製品を育てていく方針だ。これまでも高品質なカラマツ集成材を生産してユーザーから評価を得ていたが、外材製品との価格競争に振り回されることも多かった。
同社の社有林も含めた紋別市の森林の約9割は「緑の循環」認証会議(SGEC)の認証を取得しており、新設された国立競技場の屋根に使われたカラマツ集成材の約3分の1は同社が供給した実績がある。環境との調和性が厳しく問われる時代になっていることを踏まえ、佐藤社長は、「市況や為替の変動などで短期的な需要は予測できない。SGEC製品などの高付加価値化できるもの等を見極めながら工場の新設なども検討していきたい」と前を見据えている。
(2022年10月25日取材)
(トップ画像=ポンセ社製のハーベスタ)

『林政ニュース』編集部
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