22世紀に向け「熊野市森林・林業ビジョン」、優良大径材の注文生産などSCM構築へ

中部地方 三重県 予算・事業

三重県の熊野市は、22世紀に向けた総合的な森林・林業対策をスタートさせる。導入から3年目に入った森林経営管理制度(新たな森林管理システム)*1*2の推進役に市町村が位置づけられる中で、全国的にも先進的な取り組みになる。

同市は、今年度(2021年度)から着手する「熊野市森林・林業ビジョン」の案を4月5日に公表、4月23日までパブリックコメントを行い、5月中に正式決定する。

同ビジョンでは、航空レーザ計測によって市内森林資源の詳細な解析を行った上で、民有林を「生産林」と「環境林」に大きくゾーニングし、①森林を活かす、②森林で生きる、③森林と共生する──の基本方針のもとに重点戦略と施策の方向性を示し、5年後(2026年)、10年後(2031年)、22世紀の達成目標を設定した(参照)。

熊野市の「ビジョン」が描く将来の素材流通の姿

このうち①森林を活かすでは、約2万1,000haに及ぶスギ・ヒノキ林が伐期に達していることを踏まえ、低コストで効率的に主伐・再造林を進められる体制づくりを目指す。航空レーザ計測で得られる単木情報をICT(情報通信技術)を使って生産・流通情報と結びつけ、A材からD材までを無駄なく利用できるサプライチェーンマネジメント(SCM)を構築する。同市の五郷町・飛鳥町周辺では古くから「なすび伐り」による複層林施業が行われ、優良大径材を取り扱う熊野原木市場がある。同市場を中心に大径材の注文生産体制を整備するほか、A材の製材工場への直送拡大や、熱電併給型バイオマス利用施設の建設などを検討する。また、同市が約40ha所有しているクヌギ林を主体にして広葉樹の活用と原木シイタケの生産拡大などにも取り組むことにしている。

熊野市農林業振興課の話「航空レーザ計測によって森林全体の正確な現況把握ができ、具体的な将来ビジョンをまとめられた。森林経営管理制度や森林環境譲与税などの新たな仕組みを活用し、行政が森林整備の主役となって動いていきたい」

『林政ニュース』編集部

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