経営管理制度を動かす! 私有林の整備に新風をもたらしている担い手達

経営管理制度を動かす! 私有林の整備に新風をもたらしている担い手達

導入から3年目に入った森林経営管理制度の担い手に新たな顔ぶれが加わってきている。同制度は、手入れ不足の私有林を市町村が集約して「経営管理権」を設定し、民間事業者に再委託(「経営管理実施権」の設定)をして整備を進める仕組み。再委託先には間伐や作業道整備などの経験が豊富な森林組合や林業事業体が多いが、フレッシュな経営体も増えてきている。

秋田初の再委託先は種苗の伊東農園、大館市で主伐・再造林

秋田県の大館市は、花岡地区の1.18haの経営管理実施権を(有)伊東農園(北秋田市、伊東毅・代表取締役)に設定したと4月16日に発表した。同市が森林経営管理制度に基づいて再委託先を決めたのは初めてであり、県内でも第1号となった。

再委託先に採択された伊東農園の主業は、苗木の生産・販売。1956年に創業し、スギの苗木づくりで事業基盤を固め、1980年代の半ばからは広葉樹の苗木生産も本格化させて品目を拡大。10年ほど前からは伐採や山林・立木の買い取りも行っており、今では約160haの社有林を保有している。

伊東社長は、全国モデルである大館北秋田地域林業成長産業化協議会*1で再造林推進部会長をつとめる地域のリーダー。そのキーパーソンが、「伐採後に植林されていない山が目立つ」と懸念を隠さない。「弊社は伐採事業については後発だが、誰かがバカになってでもやらなければいけない」と話しており、今年度中に主伐・再造林を行い、7~8年かけて下刈りや除伐などの保育作業を実施していくことにしている。

岡崎市ではIターン者が立ち上げた奏林舎が約23haを受託

愛知県の岡崎市は昨年10月27日付けで、木下町の山林約22・57haの経営管理実施権を同市千万町の一般社団法人奏林舎に設定した。

奏林舎は、Iターン者の唐澤晋平氏が代表理事となって2018年3月に発足。森林整備・調査事業をはじめ、同市額田地域の枝打ち優良ヒノキ材を使ったフェアトレード木材「リタウッド」のコーディネートや、林内に放置されている細い木や曲がった木を活かした「みかわエコ薪」の加工・販売などユニークな取り組みを行っている。

唐澤晋平・奏林舎代表理事

これまでに県から、合法木材供給事業者、認定林業事業体、意欲と能力のある林業経営体などの認定を受けており、事業基盤も強化されてきている。

経営管理を任された約23haの山林では、今後5年間をかけて搬出間伐を主体にした森林施業を行っていく計画。唐澤代表は、「これからも森林経営管理制度に基づいた山林が配分されていくので、森を育ててきた山主の想いを無駄にせず、地域の森を守り、活かす受け皿となっていきたい」と話している。

白糸植物園が富士市で森林整備、社長は元東大教授の渡邊氏

静岡県の富士市は、昨年3月26日に経営管理実施権配分計画の対象森林と経営管理実施権者を公表・決定し、富士森林組合とともに、(株)白糸植物園(富士宮市、渡邊定元・代表取締役)を選んだ。同社は、旧富士川町域(中之郷)の19.0haと須津川地区(江尾・中里・比奈・富士岡)の16.3haの計35.3haに及ぶ私有林を5年間かけて整備していく。

同社社長の渡邊氏は、北海道大学を卒業して林野庁に入り、森林計画や国有林部門などで勤務した後に、50歳代半ばで東京大学に迎えられ農学部教授をつとめた異色の経歴を持つ。東大を定年退職した後も、三重大学や立正大学の教授などを歴任。民間・市民主体の活動でも主導的な役割を果たしており、1994年9月に同社を設立。防災水源涵養路網の整備や列状及び中層間伐による収益性の高い林業経営を実践している。

(トップ画像=伊東農園が生産しているコンテナ苗)

『林政ニュース』編集部

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