【話題を追う】大林組がサイプレス・スナダヤを子会社化、狙いは何か?

【話題を追う】大林組がサイプレス・スナダヤを子会社化、狙いは何か?

スーパーゼネコンの(株)大林組(東京都港区、蓮輪賢治社長)がCLTやヒノキ・スギ製材のトップメーカーである(株)サイプレス・スナダヤ(本社:愛媛県西条市、砂田和之社長)を連結子会社化した(2月2日に発表)。両社はこれまでも資材の供給・調達などで取引があったが、ここで資本提携にまで踏み込んだのはなぜか。背景には、非住宅市場の拡大がある。

大林組は、2月1日付けでサイプレス・スナダヤの株式の46.1%を取得して筆頭株主となった。今後、常勤を含めた役員の派遣などで取締役会の過半を占めることにしており、経営の意思決定等を主導できるようになる。

大林組の傘下に入ったサイプレス・スナダヤは、約170名の従業員を擁し、2021年度の売上高は114億円に達する。西条市の東予インダストリアルパーク内で最新鋭の大型工場を稼働させており、製材から集成材、CLTまでを原木から一貫生産している。とくに、ヒノキの製材量は全国トップレベルを誇り、CLTについては、幅3m、長さ12mに及ぶ国内最大の原板をつくる設備も保有している*1

大林組の子会社となってもサイプレス・スナダヤの独立性は維持され、経営陣や生産体制、販売先などは変わらない。今後、大林組の資本力などをバックにして、ガバナンス(企業統治)の強化や技術開発の加速化などに取り組むことになる。

拡大する非住宅市場を睨み、ゼネコン中心に供給網の形成へ

大林組は、昨年(2022年)5月、神奈川県横浜市に日本初となる純木造の11階建て耐火建築物「Port(ポート( Plusプラス)」を完成させた。サイプレス・スナダヤは、「Port Plus」の建設にあたって、壁と床に用いるCLTを納めた。その後も、「CLTユニット工法」を採用した「仙台梅田寮」(宮城県仙台市)における納入実績などがある。

大林組は、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)のメイン会場に構築する木造の大屋根*2*3や、オーストラリアで世界最高(182m)の木造ハイブリッド複合ビルの新築工事を受注するなど、ビッグプロジェクトを多く抱えている。非住宅市場の木造・木質化を推進するにあたっては、国産材を持続的に利用する循環システム「サーキュラー・ティンバー・コンストラクション(Circular Timber Construction)」の構築を目標に掲げており、パートナーとなる企業等との連携強化に乗り出している。その中で、サイプレス・スナダヤとの協業を深めることが検討され、「資本提携に向けた話が想定以上に円滑に進んでいった」(大林組担当者)という。

需要拡大が見込める非住宅市場には様々な企業が参入してきており、鹿児島県湧水町で新工場を稼働させたMec(メック) Industryインダストリー)(株)の株主には、大手ゼネコンの(株)竹中工務店やCLT・集成材メーカーの山佐木材(株)が名を連ねている。  

企業規模が桁違いに大きいゼネコンなどが中心となって新たなサプライチェーン(供給網)を形成する動きは今後も続くとみられており、大林組とサイプレス・スナダヤとの資本提携は、その先駆けの1つに位置づけることができる。

(2023年2月2日取材)

(トップ画像=大林組が構築を目指している「サーキュラー・ティンバー・コンストラクション」のイメージ)

『林政ニュース』編集部

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