「GX」実現へ、投資先に改質リグニンなど 目標に「林業・木材産業のグリーン成長」

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「GX」実現へ、投資先に改質リグニンなど 目標に「林業・木材産業のグリーン成長」

政府が重点政策として打ち出している「GX」(グリーントランスフォーメーション、Green Transformation)の実現に向けて、改質リグニンなど木質系新素材の利用や都市(まち)の木造化などを推進することが位置づけられた。社会全体の脱炭素化を図るGXを進めるためには、巨額の投資が必要とされている。グリーン成長を目指す林業・木材産業は、GXの投資先としても有望視されており、新たな資金を受け入れて有効活用する戦略的な取り組みが必要になっている。

政府は、昨年(2022年)12月22日に「GX実現に向けた基本方針(案)」をとりまとめ、「今後10年を見据えたロードマップ」を示した。関連して、開会中の通常国会にGX推進法案を提出し、成立を目指すことにしている。

基本方針(案)とロードマップでは、産業分野ごとにGXの目標や投資先、規制・制度の見直し方向などを提示しており、食料・農林水産業に関しては、「みどりの食料システム戦略」の推進とともに、「森林・林業・木材産業による経済・社会のグリーン成長の実現」を目標に掲げた。具体的な取り組み課題として、「エリートツリーやデジタル技術等、森林分野のイノベーションの実装」や「改質リグニンなど木質系新素材の開発・普及や都市の木造化」をあげ、GXの投資先として「航空レーザー計測による高度森林資源情報」や「改質リグニンによる高機能プラスチック代替技術」を示した。また、森林吸収J-クレジットの活用促進も重点課題として明記。このほか、住宅・建築物関連で、「木造建築物の普及・拡大」を目標に据え、「非住宅・中高層の建築物等木材利用に必要な投資」が必要としている。

10年間で150兆円超の投資など“追い風”をどう活かすか

政府の試算によると、GXを実現するためには、今後10年間で150兆円超の官民投資が必要であり、民間投資を呼び込むため、来年度(2023年度)から10年間、総額20兆円規模の「GX経済移行債」を発行する方針。また、二酸化炭素(CO2)の排出に課金をして削減を促す「カーボンプライシング」を導入することも予定しており、2026年度から排出量取引市場を本格稼働させ、2028年度には炭素に対する賦課金制度を創設することなどを検討している。  

GXの加速化に向けて、「非常に大きな枠組みが動き出す」(林野庁幹部)状況となり、様々な産業が脱炭素化を競い合う構図にもなっている。その中で林業・木材産業は、GXという“追い風”をいかに活かすかが問われることになる。投資先としてのメリットやリスクなどを整理した上で、他産業と比べても脱炭素化に貢献できる産業であることを訴えていくことが必要になっている。

(2022年12月22日取材)

『林政ニュース』編集部

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