譲与税の配分基準見直しを巡る議論大詰め 自民党プロジェクトチームが山村への増額提言、決着は?

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森林環境譲与税の譲与基準を見直す検討作業が大詰めを迎えている。自民党の「地球温暖化防止のための森林吸収源対策プロジェクトチーム(PT)」(委員長=江藤拓・元農林水産大臣)が森林の多い山間部の自治体への譲与額引き上げを求めているのに対し、都市部の自治体からは譲与額を減らされることへの警戒感が出ている。双方が納得できる“落としどころ”を探る難しい局面になっている。

自民党のプロジェクトチームは、11月21日に「森林環境譲与税の譲与基準の見直しに向けた提言」をまとめ、私有林人工林面積による配分割合を現行の50%から60%に引き上げる一方、人口に基づく配分割合は30%から20%に引き下げるべきとした。2019年度に譲与税が創設された当初と比べて活用実績が年を追うごとに増加していると評価した上で、2020年の「2050年カーボンニュートラル」宣言や今年(2023年)5月に決定した「花粉症対策の全体像」*1などの新たな政策課題が浮上していると指摘。これらの課題に対応していくためには、森林整備を一層推進する必要があるが、山間部の自治体の財政基盤は依然として脆弱であるとし、人口による配分割合を減らして私有林人工林面積による配分割合を高めることが必要とした。

神奈川県は独自提案、100億円増を踏まえ“絶妙の一手”出るか

一方、都市部の自治体からは、配分額が減ると計画的な取り組みができなくなるとして、慎重な検討を求める声が強い。

代表的なものとして神奈川県は、知事の黒岩祐治氏と市長会会長の本村賢太郎氏(相模原市長)及び町村会会長の湯川裕司氏(山北町長)の連名で「譲与基準見直しに関する要望」を10月20日付けで政府に提出。人口による配分割合を10%減らすと、来年度(2024年度)から全国の譲与総額が100億円増額されても同県への譲与額は今年度(2023年度)より約2億円減の10億7,000万円にとどまるとし、「増額前の500億円に係る譲与基準は現行制度を維持し、増額分の100億円に係る譲与基準は私有林人工林面積とする」という独自の提案を行った。

自民党のプロジェクトチームや自治体等からの提言・要望を受けて、譲与基準の見直しに関する議論は自民・公明両党の税制調査会が進めており、12月中旬には結論を出す予定だ。来年度から森林環境税の徴税(1人年額1,000円)が始まることもあって、様々な意見が飛び交う中、着地点を見出すカギは、来年度から譲与総額が600億円に増えることを踏まえた配分割合の細かな調整になるとみられる。林野庁幹部は、「100億円の増額分を勘案し、譲与額が減少する自治体が出ないように知恵を絞りたい」としており、どこも“割を食わない”絶妙の配分割合を探る作業が続いている。その答えが、まもなく出る。

(2023年11月21日取材)

『林政ニュース』編集部

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