“魅力的な職場”をベースにチャレンジを続けるサンライフ【突撃レポート】

“魅力的な職場”をベースにチャレンジを続けるサンライフ【突撃レポート】

就活・転職市場の指標である有効求人倍率は、現在1.3。依然として売り手市場が続いている。全産業で人材確保が競われる中、魅力的な職場をつくって存在感を高めている林業会社が福島県古殿町にある。それは創業13年目に入っている(株)サンライフ(水野喜文・代表取締役)。平均年齢30歳という若さを武器に、「新しい林業」にも果敢にチャレンジしている同社の最新状況をレポートする。

独自の評価制度と“ガラス張りの経営”で社員の意欲を後押し

サンライフの水野喜文社長は、「職場の雰囲気を最も大事にしている」と言い、こう続けた。「会社で過ごす時間は長い。だからこそ笑顔で意欲的に働けることを大切にしている。そうすれば社員の人生も楽しくなるし、仕事の質も業績も自然に上がってくる」。

水野喜文・サンライフ社長

同社の社風はユニークだ。仕事着は、ジーンズ生地の作業服かSTIHL社製の防護作業服で“かっこよさ”を追求。使用機械には同社のロゴマークを入れ、ホームページなどを使った情報発信も積極的に行って、統一感を保ちながら社内外での“つながり”を広げている。

「仕事は断らず、チャレンジする」ことをモットーにしており、県内関係者からは、「(福島県内で)山仕事に困ったらサンライフ」と言われるほど信頼が厚い。

25名の社員が失敗を恐れず主体的に働いていることも、周囲から一目置かれている。その1つの理由は、独自の評価制度にある。給与のアップは自己申告制で、一定のノルマを達成し、同僚から認められれば昇給する仕組みになっている。

また、各社員がどのようなスキルを持ち、利益を出しているかなどがわかる“ガラス張りの経営”を行って、各自の創意工夫を引き出している。併せて、業務に必要な免許・資格を取得する費用は会社が全額負担し、スキルアップを支えている。

野崎強・サンライフ統括部長

現場の打ち合わせや調整、総務などを担当している統括部長の野崎強氏は、「(水野社長の)ものすごく面倒見のいい性格」が社風の基礎にあるとし、「たまに夜遅くまで社員の相談事に乗っているのを見かける。社員が社長を慕っているからこそ、働きやすい職場になっているのではないか」と話す。

素材生産量約3万m3、造林はお祭りのようにみんなで楽しむ

サンライフが手がけている現場では、協力会社を含めて約50名が働いている。年間素材生産量は約3万m3。皆伐後は必ず植林しており、年間の植え付け面積は約150haに及ぶ。

使用機械は、グラップル10台、プロセッサ7台、フォワーダ5台、フェラーバンチャ4台、大型トラック4台の計30台。機械の約8割はレンタルで使用しており、自社購入のマシンは約2割。このほか、必要な装備一式を人数分揃えている。

基本的に、同社の社員が機械を使って素材生産を行い、協力会社が造林作業を担う体制をとっている。

だが、協力会社だけで手が回らないときは、同社の社員総出で造林作業に当たって一気に仕上げる。一昨年度(2021年度)には、県内国有林約100haの下刈り作業があった。このときは、水野社長も含めた全社員が現場で汗を流し、約1か月で終わらせた。

加藤学治・サンライフ事業部長

水野社長は、「下刈りのようなキツイ作業は、みんなでお祭りのように楽しんで取り組むのが1番いい」と笑みを浮かべる。現場の進捗管理などを担当している事業部長の加藤学治氏も、「下刈り作業をみんなでやり遂げることで達成感や充実感が高まる」と口を揃える。

民有林の担い手へ町長も期待、「新しい林業」などにも挑戦

サンライフは、水野社長が13年前に個人事業主として創業した。仕事の依頼が増えるにつれて仲間も集まってきたが、当時の経営スタイルは今とは真逆で、ワンマンのパワープレースタイルだったという。その結果、「人が離れてしまった」ことを糧として、「今のスタイルに落ち着いた」と水野社長は振り返る。

同社の業績は右肩上がりで伸びており、昨年(2022年)の年間売上高は約4億円に達している。主な事業は、民有林、国有林での森林整備、素材生産、造林、特殊伐採などで、とくに民有林での仕事が多くなっている。

水野社長は、「社員も増えてきたので、森林経営・管理の面も強化していかなければならない」と新たな方向性を打ち出しており、古殿町長の岡部光徳氏も、「いずれは町内にある民有林の経営・管理を担ってほしい」と期待を寄せている。

この期待に応えるべく、同社は昨年から町などと連携して「新しい林業」モデル実証事業に参画しており、独自の「古殿モデル」構築に取り組んでいる*1

同モデルでは、QRコードを用いたトレーサビリティ(生産履歴)の確保や森林情報と地籍情報を関連づけた「森林データベース」の利用などを通じて、丸太の高付加価値化や業務効率の向上などを目指している。

今後の展開について、加藤事業部長は、「様々なツールを試しながら取り組みを加速化していきたい」と言い、野崎統括部長は「職場環境を整えてチャレンジを後押ししていく」と語る。これを受けて、水野社長は、「いずれは苗木生産や木材加工などにも挑戦し、循環型林業を実現する」と力強く締め括った。

(2023年4月7日取材)

(トップ画像=実証実験でマルチャー(木材破砕機)の性能などを確認)

『林政ニュース』編集部

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