住友林業らが600億円規模の森林ファンド 北米の森林管理を通じクレジットを創出

住友林業らが600億円規模の森林ファンド 北米の森林管理を通じクレジットを創出

住友林業(株)(東京都千代田区、光吉敏郎・代表取締役社長)など10社は、7月10日に森林ファンド「Eastwood Climate Smart Forestry Fund Ⅰ」を立ち上げた。同社が昨年(2022年)2月に策定した長期ビジョン「Mission TREEING 2030」に基づくもので、国内最大規模の森林ファンドになる。

同ファンドの資産運用額は約600億円、運用期間は15年間とし、アメリカ、カナダを中心に2027年度までに約13万haの森林を取得して、年間約100万tのカーボンクレジットを創出する。

同ファンドへの出資者は、木材販売による収益のほか、カーボンクレジットでの現物配当も選択でき、排出量取引などに利用できる。

カーボンクレジットには、政府や国連が関与するコンプライアンスクレジットと、民間主導のボランタリークレジットの2種類があり、同ファンドではボランタリークレジットを扱う。クレジットの信頼性を担保するため、ボランタリークレジット基準策定ガバナンス機関(英国)が定めたガイドラインを遵守する。

取得した森林では、皆伐による木材生産は行わず、非皆伐で母樹を残し、環境と経済が両立する施業を目指す。

同社とともに同ファンドに出資したのは次の9社。

ENEOS(株)▽大阪ガス(株)▽東京センチュリー(株)▽日本郵政(株)▽日本郵船(株)▽芙蓉総合リース(株)▽(株)三井住友銀行▽三井住友信託銀行(株)▽ユニ・チャーム(株)

光吉社長「スモールスタートでも日本版森林ファンドを組成」

住友林業の森林管理面積は、国内外合わせて約28.8万ha。これを2030年までに50万haに拡大する目標を掲げており、光吉社長は、「日本国内やインドネシア、ニュージーランドなどでも森林ファンドを展開し、生物多様性保全などがマネタイズできる仕組みを構築していく」との方向性を示した。とくに国内については、「最低でも経済林を5,000ha以上集約化しスケールメリットを活かす必要がある」と指摘、同社と三井住友信託銀行及び岡山県西粟倉村が手がけている「森林信託」*1がモデルになるとした。同社の長期ビジョンでは、約200億円をかけて鹿児島県志布志市周辺で2025年までに木材コンビナートを着工し、国産材の出口(需要)を広げることも計画している。光吉社長は、「スモールスタートになるかもしれないが、日本版森林ファンドを組成できるように取り組んでいく」と強調した。

森林ファンドについて説明する光吉・住友林業社長

(2023年7月10日取材)

『林政ニュース』編集部

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