私有林を含めても北海道と東北が2強、各地方に豊富な資源
3月9日に開催された「多様な木材需要に対応するための需給動向調査」に関する報告会で、森林総合研究所の青井秀樹氏(林業経営・政策研究領域木材利用動向分析チーム長)が興味深い発表を行った。青井氏は、全国の主だった広葉樹産地を訪ねて、聴き取り調査などを重ねている。そのエッセンスを紹介しながら、量と価格の両面から広葉樹の増産可能性を探っていこう。
まず、量から――。前編でみたように、国有林では広葉樹の蓄積量が着実に増加している。これに私有林が加わるとどうなのか。やはり、北海道と東北地方のボリュームは抜きん出ている。北海道には、国有林と私有林を合わせて3億m3近い膨大な蓄積があり、その7割弱が国有林。樹種もミズナラ、イタヤカエデ、ウダイカンバ、キハダ、カツラなどバラエティ豊かだ。東北地方(青森・秋田・岩手県)にも国有林+私有林で約1億6,000万m3の蓄積があり、国有林率は5割強、植生は北海道に近い。この“2強”を追うのが、九州地方(熊本・宮崎県)と中国地方(鳥取・島根・広島県)で、ともに蓄積量は6,000万m3以上。九州地方は私有林率が7割強でシイ、クス、カシ類などの常緑樹がメイン、中国地方は私有林率が9割を超えており、コナラ、ブナ、ヤマザクラなどが分布する。以下、中部地方(岐阜県)は約4,400万m3(私有林率8割弱)、北陸地方(富山・石川県)は約4,000万m3(同7割強)、信越地方(長野県)は約3,700万m3(同6割強)、北関東地方(群馬県)は約2,500m3(同5割強)、四国地方(高知県)は2,300万m3(同8割強)となっている。各地方には保護対象林があるので、成長してきた広葉樹をすべて伐採・利用できるわけではないが、私有林を含めてかなりの蓄積量がある。では、これだけの“資源”をどれだけ利用しているのか――。
北海道+東北+九州で生産量の7割、混ざりものとして出材
青井氏は、広葉樹の流通量を素材生産量とほぼ同じと仮定して、トップ画像のようなランキングをまとめている。1位は北海道で59万m3(全体の26%)、2位が岩手県で30万2,000m3(同13%)、3位が鹿児島県の16万4,000m3(同7%)。地域別に整理すると、東北6県で65万9,000m3(同29%)、九州4県で30万m3(同13%)となり、北海道+東北+九州で全体の約7割(154万9,000m3)を占める。青井氏によれば、このうち数%が用材(家具、内装材向け)として原木市場に出品されている。かりに用材出品率を5%とすると7万7,000m3になり、前号で報じた製材用広葉樹の国内生産量(約10万m3)とほぼ符合する。
広葉樹の蓄積量に対して出材量が少ないことには、生産の実態が関係している。現状は、チップ用原木に混じっていたり、針葉樹の間伐・皆伐時に混在しているものや支障木が大半。こうした“混ざりもの”の中から大径木を抜き取って原木市場で市売りするか、特定の業者に直販するのが広葉樹流通の基本ルートになっている。チップ用原木生産全体の中から広葉樹の用材が得られる割合は数%程度とされており、当面はこの比率を上昇させることが増産への近道となる。そのためには価格(材価)のアップが欠かせない。
儲けをドブに捨てている2mの玉切り、直材はできるだけ長い採材を
原木市場で売買される、つまり価値のある広葉樹の条件は、①通直であること、②長さ2m以上、③末口20㎝以上、④節・腐れなし──など。ただし、希少樹種では①~④の条件を満たさなくても売買され、全般に径級・長級が大きくなると単価が上がる。
ここで問題となるのは②だ。前述したように、広葉樹の多くはチップ用原木に混ざって出材されているため、なんでもかんでも2mで玉切りされている。径級・長級が大きくなると単価が上がるという“勘所”を無視して、みすみす儲けをドブに捨てているわけだ。価格を上げるためには、直材部分をできるだけ長く採材する必要がある。
では、そうした原木をどこへ持っていけばいいのか。広葉樹の価格を高めて供給量を増やすには、原木市場の存在が重要になってくる。
限られた流通ルートの再構築が必要、冬期に1回の原木市でもいい
広葉樹を年間1,000m3以上取り扱う原木市場では買い手が全国から集まり、良材には高値が続出する。また、広葉樹主体の銘木市場では年間数千~数万m3以上の原木が集まる。長く採材した良材は、こうしたところに持ち込めばそれなりの価格がつく。ただし、このような市場は多くない(図参照)。

青井氏は、地域の実情に合った広葉樹流通の再構築が必要としており、広葉樹原木市の毎月開催が困難であれば冬期に1回でもいいから出品量を増やし、買い手を集めて、各地に生育している広葉樹の経済的価値を高めることを提案している。
広葉樹は、カバ類の銘木クラスならm3当たり150万円もの値がつく。一般材でも、バブル期にナラ(北海道産)がm3当たり9万円以上を記録し、2016(平成28)年時点でも4万円台を維持している。マカバ・タモでも3万円、センも2万円以上だ。世界的に広葉樹の良材は不足し始めており、国内の広葉樹を利活用する好機が到来していることは間違いない。
(2017年3月9日取材)
(トップ画像=広葉樹の素材生産の都道府県ランキング(3万m3以上を対象)
『林政ニュース』編集部
1994年の創刊から31年目に突入! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。