私有林人工林面積の割合を55%に引き上げ 人口割合は5%下げ、譲与基準を見直し

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自民・公明両党は、12月14日に来年度(2024(令和6)年度)の税制改正大綱を決定した。焦点となっていた森林環境譲与税の譲与基準見直しについては、私有林人工林面積による配分割合を現行の50%から55%に引き上げる一方、人口に基づく配分割合は30%から25%に引き下げるとした(参照)。

譲与基準の見直しにより、森林の多い山間部の自治体に配分される譲与額が増えることになる。また、来年度から譲与総額が500億円から600億円へ100億円増額されるので、人口の多い都市部の自治体への譲与額も今年度(2023(令和5)年度)ベースが維持される。“譲与額が減少する自治体はゼロ”という絶妙の“落としどころ”で、譲与基準の見直し議論が決着した。

【解説】「増やせ」と「減らすな」を両立、青山長官「1歩前進」

騒動というほどではないが、譲与基準の見直しを巡る検討作業は一筋縄ではいかなかった。自民党の「地球温暖化防止のための森林吸収源対策プロジェクトチーム(PT)」(委員長=江藤拓・元農林水産大臣)が与党税調に提言したのは、私有林人工林面積による配分割合を現行の50%から60%に引き上げる一方、人口に基づく配分割合は30%から20%に引き下げるという案*1。森林整備に取り組む山間部自治体の財源を増やすことを狙ったが、与党税調は、都市部の自治体から譲与額が減ることへの懸念が出ていることなどに配慮し、変動幅を5%にとどめる結論を下した。

今年度の譲与総額は500億円で人口割合による譲与額は500億円×30%の150億円。来年度は人口割合が25%にダウンするが、譲与総額が600億円に増えるので、譲与額は600億円×25%の150億円となり、今年度と変わらない。100億円の増額分は主に森林の多い自治体に配分されることになり、譲与額を増やせという自治体と減らすなという自治体の双方の“顔が立つ”ことになった。

青山豊久・林野庁長官に、譲与基準の見直し議論にケリがついたことへの所感を尋ねると、「1歩前進ですね」と一言。来年4月からは、いよいよ森林環境税の徴収(1人年額1,000円)が始まる。国民に新たな税負担を強いることへの理解をいかに広げていくか。2歩目、3歩目に向けた検討作業が早くも始まっているようだ。

(2023年12月14日取材)

『林政ニュース』編集部

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