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米国、ベトナム、インド、韓国などへ赴き市場調査を重ねる
山田会長が頻繁に海外に赴いているという話は聞いているが、この3年間だけで9か国にも行っているとは驚いた。具体的にどのような国を視察しているのか。
米国に2回、ベトナムに3回、インドに2回、韓国に2回行ったほか、スウェーデン、ニュージーランド、オーストラリア、インドネシア、台湾にも1回ずつ調査に入った。
私が初めて海外の林業現場を視察したのは1978年の台湾で、以降、機会を捉えて外国の実情を実際に見るようにしてきた。これまでに訪れたのは、合計で20か国くらいになる。

最近は海外視察のペースが上がっているのか。
2021年6月に日本木材輸出振興協会の会長に就任し、翌22年10月に当協会が輸出促進法に基づく認定品目団体になってからは、輸出のターゲット国を中心にして調査に訪れる機会が増えている。
輸出のターゲット国には、どのような国を考えているのか。
米国、中国、韓国、台湾、インドなどだ。当協会では、これらの国における市場・規制調査や、展示会への出展などを通じた販路開拓活動を継続的に行っている。
成果は出ているのか。
日本政府は、2025年4月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画の中で農林水産物・食品の輸出額を2024年の1.5兆円から2030年までに5兆円に増やす目標を設定した。この5兆円のうち木材をはじめとした林産物で1,660億円を確保することにしており、目標達成に向けてほぼ順調に推移してきている(図参照)

世界の木材消費量は増え続け、新たなビジネスチャンスも生まれる
山田会長は、日本木材輸出振興協会が主体となっている海外調査に加えて、スウェーデンやニュージーランドなどの林業現場にも足を運んでいる。その目的は何か。
これらの国では、林業機械化や木材加工・流通システムの最新状況を見るようにしている。世界の林業国と呼ばれるところでは、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を積極的に活用して新しい生産・管理システムを構築し、競争力を高めている。日本も負けてはいられない。
世界の林業国は、現状に安住せず、技術革新を加速しているわけか。
基本的に世界の木材消費量は増え続けていくと予測されている。ITTO(国際熱帯木材機関)によると、産業用丸太の消費量は2050年には2015年比で45%増加し、製材や合板用の消費量も増えると試算されている(トップ画像参照)。世界の木材市場が拡大していけば、当然ながら新たなビジネスチャンスも生まれてくる。

日本の人工林資源に十分な競争力、トランプ関税の影響は?
2023年に意見交換した際、日本の人工林資源は世界に伍せる競争力を持っていると述べていたが、最近の海外視察を経てもその見方は変わっていないか。
全く変わっていない。環太平洋地域で人工林資源が豊富なのは、米国とニュージーランドだ。米国は、西海岸にダグラスファーが約450万ha、南部にサザンイエローパインが約2,000万haあり、ニュージーランドにはラジアータパインが約170万haある。
これに対し、日本にはスギの約440万haをはじめとして、ヒノキの約260万ha、カラマツの約95万ha、トドマツの約72万haという潤沢な人工林がある。
問題は、その潤沢な人工林資源をどうやって市場につなげていくかだ。とくに、海外輸出となると、想定外のことが起こりうる。
例えば、米国のトランプ政権は、昨年4月に独自の関税政策を打ち出して市場に混乱を引き起こし、木材貿易にも影響を及ぼしている*4。
いわゆるトランプ関税によって、木材関係では、米国と中国やカナダとの対立が深まっている。
ただ、米国内の木材需要を米国内の森林資源だけで賄おうとしても事実上不可能に近いだろう。米国の住宅需要は、中古市場のリフォームも含めて堅調に推移してきており、住宅不足の状況が続いている。これまではカナダからの輸入材で手当てしてきたが、その先行きが見通しづらくなっている。
時代は大きく変わっていることを大前提に輸出戦略を考える
トランプ政権は、国有林に増産を命じてもいる。自国の林業・木材産業を保護し復活させようという意図があるのではないか。

そうした側面もあるだろうが、米国の国有林が実質的な供給力をどれだけ持っているかは、よく見極める必要がある。私も現地を調査しているが、十分な手入れがされていない林分も見られる。短期的な増産はできるかもしれないが、循環的に利用できる木材産業用の資源かというと疑問符がつく。
いずれにしても、時代は大きく変わってきていることを大前提に、これからの輸出戦略を考えるべきだろう。
日本の木材輸出は、中国向けの丸太輸出が過半を占めており、付加価値の高い製品輸出の割合を高めていくことが課題になっている。
そのとおりだが、丸太での輸出に経済合理性があるという現実もきちんと受け止めなければいけない。逆に言うと、海外のユーザーが日本の木にどのような“価値”を求めているかを見極めていけば、新しい需要が高まる。(後編につづく)
(2025年1月5日取材)
『林政ニュース』編集部
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